危険あぶな)” の例文
旧字:危險
「マア、ほんとうに危険あぶないですね、——それにしても藤岡さんがいなけれゃあ、その人は今ごろもうどうなっているか分りませんね」
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
危険あぶないとも、恐ろしいとも何とも感じないまま船橋ブリッジの上から見下ろしていたものだ。恐らく側に立っていた船長も同様であったろうと思う。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
出て行かるゝなら途中が危険あぶない、腐つても彼火事頭巾、あれを出しましよ冠つてお出なされ、何が飛んで来るか知れたものではなし、外見みえよりは身が大切だいじ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
廐の屋根裏には野梯子が掛つてゐる、薄暗い中を啄木は、『危険あぶないから、危険いから』と言ひながら先に立つて梯子を上つてゆく、皆んな後から続いて上つた。
札幌時代の石川啄木 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
親戚の者は危険あぶないからと云って止めたが、留守のことが心配になるうえに、小供が土産の餅を待っているので、それを悦ばしたいと思って、むりから帰りかけた。
白い花赤い茎 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
女の帽子針のさきさやめて居るのは、仏蘭西フランスの女が長い針のさき危険あぶなくむき出しにして居るのとちがふ。衛生思想が何事なにごとにも行亘ゆきわたつて居るのはさすがに独逸ドイツである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「大丈夫だけれども危険あぶないのよ。どうしても秀子さんから詳しい話しをかしていただかないと」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「とにかく参ろうではございませぬか。今夜はどうやら月もなく星さえ曇って見えない様子。枯木を集めて松火たいまつとし、道を照らして進みましたら危険あぶないこともありますまい」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いひ合はさねど、四五人が、ぐるりと四方を、取巻いて。一所に行かふと眼を離さず。前から引くもの、背後うしろから、押しては危険あぶない。帽子が脱げた、下駄が見えぬの、大悶着。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
吉里は一番後れて、階段ふみだんを踏むのも危険あぶないほど力なさそうに見えた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
危険あぶない芸当をつてるといふ様な気がして、心が咎める。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼品あれはトレード製の極上品なんだ。解剖刀メスよりも切れるんだから無くなると危険あぶないんだ。鞘に納めとかなくちゃ……」
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「私は親類の餅搗を手伝いに往っておりました、遅いと山が危険あぶないから泊って往けと云われましたが、小供が餅を待っておりますから、早く帰りたいと思いまして」
白い花赤い茎 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「あすこがもう少し広いといいけれども」と危険あぶながるので、よく宗助から笑われた事があった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ぐずぐずせずと身支度せい、はやくはやくとり立つれば、傍から女房も心配げに、出て行かるるなら途中が危険あぶない、腐ってもあの火事頭巾、あれを出しましょかぶっておいでなされ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
危険あぶない! そんな、刃物なんか! ……誰か来てください! あッ誰か!」
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もともと進まぬお外出ゆゑ、これを機会しほのお帰りか。それとも外に子細があらば、なほさら、無理にといふでもなし。どの道、危険あぶなげ無い事ならと。念を押したる分れ道。見返りがちにゆく影を。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
『釧路座に五百人ぢや、桟敷が危険あぶないね。』
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「お金さん、ちょっと見て来て下さい。バラだまを入れて打つと危険あぶないから」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
実際危険あぶない。レオナルド、ダ、ヸンチと云ふ人は桃のみき砒石ひせきを注射してね、其実そのみへも毒がまはるものだらうか、どうだらうかと云ふ試験をした事がある。所が其桃をつて死んだ人がある。危険あぶない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今度こんだは少し危険あぶないようだから、誰かに頼んでくれないか」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
気を付けないと危険あぶな
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)