あは)” の例文
鳶の者と彌次馬と、近所の衆とが力をあはせて、それをようやく救ひ出した時、平次と八五郎は若駒のやうに、泡を噛んで飛び付きました。
夫婦は心をあはせて貫一の災難をかなしみ、何程のつひえをもをしまず手宛てあての限を加へて、少小すこしきずをものこさざらんと祈るなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あのちひさな建築技師けんちくぎしが三がいも四かいもあるてゝ、一かいごと澤山たくさん部屋へやつくるのですから、そこには餘程よほどあはせたちからといふものがはいつてるのでせう。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
〔譯〕三軍和せずば、以てたゝかひを言ひがたし。百官和せずば、以てを言ひ難し。書に云ふ、いんを同じうしきようあは和衷わちゆうせよやと。唯だ一の和字、治亂ちらん一串いつくわんす。
雨を交へてからは、有力な味方でもが加はつたやうに、益々ます/\暴威を加へてゐた。風と雨と波とが、三方から人間の作つた自然の邪魔物を打ち砕かうとでもするやうに力をあはせて、此建物を強襲した。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
衆をあはせし凡夫ぼんぷ等は
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
八五郎は飛んで行くと、折から驅け付けてくれた土地の下つ引と力をあはせて、店中の人數を、主人の死骸の前に呼び集めました。
小僧の榮吉と手代の丈太郎が立ち去つた後平次は八五郎と力をあはせて、この一廓上下四つの部屋を徹底的に調べ始めました。
しかし、もう一人の男も默つて見てゐたわけではない。女と力をあはせて、恐ろしい骨折りではあつたが、たうとう番頭の勘三郎を締め殺してしまつた」
同心久良山くらやま三五郎は、橋番所から出した船と力をあはせて、一應事件の起つた橋下の一角の、あらゆる船を停めました。その邊はさすがに馴れた手順です。
そのうちに立ち直る平次、二人が力をあはせさへすれば、金兵衞がどれほど獰猛だうまうでも及ぶことではありません。
顏は新しいが、野心的で戰鬪的な太助——かつての矢の根五郎吉を擧げる時、平次に力をあはせて働いた若い御用聞の一人が殺されたといふのは容易ならぬことです。
人間が首を突つ込むほど開けるためには、どうしても三四人の力をあはせなければならなかつたでせう。
親分思ひのガラツ八は、すつかり心配して、お靜と心をあはせていろ/\慰めもし、勵ましもしましたが、平次は頭を振るだけで、一向相手にもならなかつたのです。
その足の惡いのと聲のさびで、矢の根五郎吉と見當をつけ、平次と太助が力をあはせて苦もなく縛りましたが、この手柄の蔭に、重大な失策しつさくが潜んでゐるやうな氣がして
久太郎と力をあはせてたけり狂ふ春松を犇々ひし/\と縛り上げたことは言ふまでもありません。
「番頭の清六さんとあつしを手傳はせて、三人力をあはせて遺言状を隱しましたよ」
八五郎と力をあはせて、その日一日、平次の手にまとめた材料といふのは、總兵衞は慈悲心に富んだ人間ではあつたが、少し頑固ぐわんこで曲つた事や正しくない者には恐ろしく冷酷であつたこと
百人町の百兵衞と力をあはせ、他所よそ乍ら長者丸の一角をにらませて置いたのでした。
弟の春吉と力をあはせ、勇太郎を無理に呼び寄せて、しな垂れかゝるところへ、首へ細紐を卷いて二人の力でめ殺し、たうとう口を塞いでしまつたのだらう、その上に臼を仕掛けて落し