千曳ちびき)” の例文
彼等は皆息を呑んで千曳ちびきの大岩を抱えながら、砂に片膝ついた彼の姿を眼も離さずに眺めていた。彼はしばらくの間動かなかった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かはれば現在げんざいをつとまへ婦人ふじん身震みぶるひして飛退とびのかうとするのであつたが、かる撓柔しなやかにかかつたが、千曳ちびきいはごとく、千筋ちすぢいとて、そでえりうごかばこそ。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
千曳ちびきの石胸に重しと夢さめて
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
猪首の若者はまっ赤になって、おおかみのようにきばを噛みながら、次第にのしかかって来る千曳ちびきの岩を逞しい肩に支えようとした。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
千曳ちびきの大岩を転がすなどは朝飯前の仕事である。由良が浜の沖の海賊は千人ばかり一時にとりこになつた。天の橋立の讐打ちの時には二千五百人の大軍を斬り崩してゐる。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
千曳ちびきの大岩をかついだ彼は、二足ふたあし三足みあし蹌踉そうろうと流れのなぎさから歩みを運ぶと、必死と食いしばった歯の間から、ほとんど呻吟する様な声で、「いか渡すぞ。」と相手を呼んだ。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その外或はくろがねしもとに打たれるもの、或は千曳ちびき磐石ばんじやくに押されるもの、或は怪鳥けてうの嘴にかけられるもの、或は又毒龍のあぎとに噛まれるもの、——呵責も亦罪人の數に應じて、幾通りあるかわかりません。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その外或はくろがねしもとに打たれるもの、或は千曳ちびき磐石ばんじやくに押されるもの、或は怪鳥けてうくちばしにかけられるもの、或は又毒龍のあぎとに噛まれるもの——、呵責かしやくも亦罪人の数に応じて、幾通りあるかわかりません。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)