-
トップ
>
-
北向
>
-
きたむき
行水でもつかうように、
股の
付根まで
洗った
松五
郎が、
北向の
裏二
階にそぼ
降る
雨の
音を
聞きながら、
徳太郎と
対座していたのは、それから
間もない
後だった。
山田の
書斎は八
畳の
間でしたが、
其に
机を
相対に
据ゑて、
北向の
寒い
武者窓の
薄暗い
間に
立籠つて、
毎日文学の話です、
此に
二人が
鼻を
並べて
居るから
石橋も
繁く訪ねて来る
一年夏の
半、
驟雨後の月影
冴かに
照して、
北向の庭なる竹藪に
名残の
雫、
白玉のそよ吹く風に
溢るゝ
風情、またあるまじき
観なりければ、旗野は村に酌を取らして、
夜更るを覚えざりき。
北向の庭にさす日や
敷松葉