剽軽へうきん)” の例文
旧字:剽輕
「一寸お待ちなせエ、戸締のい家たア随分不用心なものだ、れ程貧乏なのか知らねいが」と彼の剽軽へうきんなる都々逸どゝいつの名人は冷罵れいば
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
若い門弟と美しい令嬢二人は、漱石氏の面白い話し風にじつと聴きとれながら、時々出る剽軽へうきんな皮肉に若い胸をはつと躍らせてゐた。
今時分煤払すすはらひがあるのかと思つて、下男の松さんにきくと、お酒好きの剽軽へうきんな松さんは、佐渡ヶ島へ引越しをするぢやがな、などと冗談じようだんをいつてゐたが
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
奥様がわざ/\磊落らいらくらしくよそほつて、剽軽へうきんなことを言つて、男のやうな声を出して笑ふのも、其為だらう。紅涙なんだくお志保の顔を流れるのも、其為だらう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さく子はしかし剽軽へうきんな女ではあつたけれど、決して踊りはしなかつた。あをくなつて反抗するのであつた。
風呂桶 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「本当に剽軽へうきんな奴だなあ、あいつは又何か僕達をひつかけようとしてゐるんだらう」
(新字旧仮名) / 有島武郎(著)
ほかの連中を見廻しながら、彼は、剽軽へうきんな顔をした。
落葉日記 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
剽軽へうきんさがなりし友の死顔の
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
きたないことと、剽軽へうきん
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
そこで英軍の塹壕から、剽軽へうきんな男が一人のこ/\這ひ出して、やつとこさで牝牛を連れ帰つたのち、そこらに散らばつた銀貨を一つづつ克明に拾ひ上げた。
三十五六の剽軽へうきんらしき男、若き人達の面白き談話に耳傾けて居たりしが、やがてポンと煙管きせるを払ひて
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
日頃ひごろ剽軽へうきんさで松さんは、仔鹿の頭のところに、しやがみこんだ。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
と拾つた男は後々のち/\まで噂をしながら、その竿で鱚を釣り、蟹を釣り、ある時は剽軽へうきん章魚たこを釣つて笑つたりした。
やがていつものやうに剽軽へうきん
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
剽軽へうきんなる男
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
帛紗包ふくさづつみのなかに入つてゐるのは他でもない、小本こほんの『膝栗毛』の一冊で、この剽軽へうきんな喜劇俳優やくしやは、借金取に出会でくはすか、救世軍を見るかして、気が真面目にふさぎ出すと
鼓村氏は剽軽へうきんな間に合せを言ふ事にかけては立派な芸術を持つてゐる男だ。誰でもい、氏に
竹のや主人、饗庭あへば篁村氏は剽軽へうきんな面白い爺さんだが、夫人はなか/\のしつかものなので、お尻の長い友達衆は、平素ふだんは余り寄付よりつかない癖に、夫人が不在るすだと聞くと、直ぐ駈けつける。
剽軽へうきんで、無遠慮で通つた棕隠は平気で坐にあがつて往つた。
有馬侯は蒲団の上から剽軽へうきんな顔を覗けて下を見た。