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前跼
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まえかが
ふりがな文庫
“
前跼
(
まえかが
)” の例文
「そうだ、これはいまのうちに相談しておかなくちゃいけないと思うんだが」と云って彼は
前跼
(
まえかが
)
みになり、両手を左右に開いた
ばちあたり
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私は
前跼
(
まえかが
)
みになると、手の
甲
(
こう
)
をかえして
拳
(
こぶし
)
の先で三和土の上をあちこち触れてみた。手の甲というものは、冷熱の感覚がたいへん鋭敏である。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
声とともにやや
前跼
(
まえかが
)
みに大股で、
閾
(
しきい
)
の上に安川の姿が現れた。伸子を案内した男は階下へ去った。安川冬子は、伸子がある専門学校に僅の間籍を置いていた時、上級の学生であった。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
それがようやく一点に集注されると、ルキーンはアッと叫んでドドドッと走り寄った。半ば開かれた扉の間に、長身
痩躯
(
そうく
)
の白髪老人が
前跼
(
まえかが
)
みに
俯伏
(
うつぶ
)
して、
頤
(
おとがい
)
を流血の中に埋めている。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
従者は二十二三と思える小柄な青年で、痩せた少し
前跼
(
まえかが
)
みになった肩と、反対に仰向になっている頭とがちょっと異様な印象を与えていた。
夜明けの辻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
金博士は、やっぱり
前跼
(
まえかが
)
みになって、飾窓の中をのぞきこみながら口を動かした。博士は、まさか頭の上に忍びよったる大蜘蛛と話をしているのだとは気がついていない様子に見えた。
毒瓦斯発明官:――金博士シリーズ・5――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
寝衣
(
ねまき
)
の
衿
(
えり
)
をかき合せながら立っていってみると、
被
(
おおい
)
をかけた行燈のそばに、源六が
前跼
(
まえかが
)
みになって、しきりになにかしていた。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
うす暗い行燈の光りを側へ寄せて、
前跼
(
まえかが
)
みに机へ向っている妻の姿を見ると、伊兵衛は膳を置いてそこへ坐り、きちんと膝を
揃
(
そろ
)
えておじぎをした。
雨あがる
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
身なりも貧しいし、殊に
前跼
(
まえかが
)
みになって、不精らしく左手だけをふところ手にした恰好が、お留伊には忘れることの出来ないほど卑しいものに感じられた。
鼓くらべ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
背の高い平四郎は、ちょっと
前跼
(
まえかが
)
みになるような歩きぶりで、座敷へはいりながら、重兵衛と松室に挨拶し、本のはいっているらしい、風呂敷包を、半之助に渡した。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
かぶっている雨合羽はひき
剥
(
は
)
がされ、大粒の雨がびしびしと、顔や手を痛いほど強く打った。さわは
前跼
(
まえかが
)
みになって風にさからいながら、けんめいに榎のところまで
辿
(
たど
)
り着いた。
榎物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
矢立を帯に
挾
(
はさ
)
んで、多少
前跼
(
まえかが
)
みになり、両手を——それは長くてぶら下げると
膝
(
ひざ
)
のあたりまで届くが——だらりと左右に垂れて、かの出ッ尻を後方で振り立てつつ、
泥溝板
(
どぶいた
)
を鳴らし
長屋天一坊
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そして急に、両手を桶の中へ突いて
前跼
(
まえかが
)
みになり、声をころして泣きはじめた。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
男も女も、老人も子供も、みんな肩をすくめ身を縮めて、おさえつけられるように
前跼
(
まえかが
)
みになって、ほんの少しずつ、それこそ飽き飽きするほどのろのろと、列といっしょに動いている。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
甲斐は一人のときも、
伴
(
つ
)
れのあるときも、なんとはなしに
際立
(
きわだ
)
ってみえた。背丈の高い躯を少し
前跼
(
まえかが
)
みにして、ゆっくりと歩く。顔つきは温かく穏やかで、微笑すると白いきれいな歯がみえた。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
痩
(
や
)
せて、眼がおち
窪
(
くぼ
)
んで、唇の色も白く、尖った肩を
前跼
(
まえかが
)
みにして、いかにもうち砕かれたような姿である。明るく晴れた空から、木洩れ日が彼の顔に
斑
(
まだ
)
らの光紋を投げ、また消えては投げする。
めおと蝶
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼は
前跼
(
まえかが
)
みになり、足を早めて、暗い街を大川のほうへ曲っていった。
へちまの木
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
茶色にやけた肌いちめんに、石灰粉の
斑
(
まだら
)
にこびりついたまま、
前跼
(
まえかが
)
みの姿勢でのろのろと鈍重に歩いてゆくようすは、人間というよりも、なにかえたいの知れないけものというようにさえみえた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
茶色にやけた
肌
(
はだ
)
いちめんに、石灰粉の
斑
(
まだら
)
にこびりついたまま、
前跼
(
まえかが
)
みの姿勢でのろのろと鈍重に歩いてゆくようすは、人間というよりも、なにかえたいの知れないけものというようにさえみえた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
前
常用漢字
小2
部首:⼑
9画
跼
漢検1級
部首:⾜
14画
“前”で始まる語句
前
前後
前途
前方
前垂
前刻
前様
前栽
前屈
前掛