別当べっとう)” の例文
旧字:別當
淡路国あわじのくに岩屋の浦の八幡宮の別当べっとうに一匹の猛犬があった、別当が泉州の堺に行く時は、いつもその犬をつれて行ったものじゃ、その犬が行くと
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
皇室御親政のいにしえにかえすという力が動いていたので、摂関家に抑えられていた反対勢力が、院の御所の事務長官である院別当べっとうなどを頭に立てて
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
天王寺てんのうじ別当べっとう道命阿闍梨どうみょうあざりは、ひとりそっと床をぬけ出すと、経机きょうづくえの前へにじりよって、その上に乗っている法華経ほけきょう八のまきあかりの下に繰りひろげた。
道祖問答 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この起因おこりは何者かが六波羅へ投文なげぶみで密告したに依るとかで、鞍馬の僧院では、一時いろいろ物議ともなり、別当べっとう蓮忍れんにん引責いんせきまで口にのぼったが、要は
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この僧侶そうりょ別当べっとうとなえ、神主の方はむしろ別当従属の地位にいて坊さんからやとわれていたような有様であった。
その顔には、例のない愛想のいい表情がうかんだ。——「乗りたけりゃ、一人でお行き。そして、わたしは行かないからって、別当べっとうにそう言っとくれ」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
是公の御者には廿銭かりがあるだけだが、その別当べっとうに至っては全く奇抜である。第一日本人じゃない。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おれはね、どうもあの馬車別当べっとうだの町の乾物屋のおやじだの、あやしいと思っていたんだ。このごろはいつでも酔っているんだ、きっとあいつらがポラーノの広場を知ってるぜ。
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
四階とは検校けんぎょう別当べっとう勾当こうとう座頭ざとう、十六官とは座頭に四度の階級があり、勾当、別当、検校それぞれ次第があって、都合十六に分れていることを言い、七十三刻とは、半打掛から中老引ちゅうろうびきまで六十七刻
さきに鎌倉へついた新田義貞は、かたのごとく侍所さむらいどころ別当べっとうへ着到を告げ、同日問注所のある裁許橋の内へ入った。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何だい、山猫の馬車別当べっとうめ。」ミーロが云いました。
ポラーノの広場 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
惟方は検非違使けびいし別当べっとうです。そのほか一味の貴紳はみな若年で、縁類か、不平か、野望の友です。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わしは山ねこさまの馬車別当べっとうだよ。」と言いました。
どんぐりと山猫 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
切目きりめ宿しゅく別当べっとうの御別院にて、別当定遍じょうへんどのの代表と称せられる法橋殿ほっきょうどのにお目にかかり、御当家よりの要旨を申し入れ、まずは懇談だけはとげて、たちかえりましてござりまする
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「田辺の別当べっとうをめぐる一群の熊野衆には、尊氏方あり、日和ひより見もありですが、われらがお会いした切目ノ法橋ほっきょうどのは、われら楠木党へきつい肩入れの御仁ごじんでございましたな。なあ助家どの」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
弘法大師こうぼうだいし御夢想ごむそうぐすり鼻神湯びしんとう。一ぷうしゅ、貧者施薬せやく当山とうざん別当べっとう
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)