なかくぼ)” の例文
いて来た大きな犬のデカと小さなピンが、かえるを追ったり、何かフッ/\いだりして、面白そうに花の海をみ分けて、淡紅ときの中になかくぼい緑のすじをつける。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
脱ぎてた、浴衣、襯衣しゃつ上衣うわぎなど、ちらちらとなぎさに似て、黒く深く、背後うしろの山までなかくぼになったのは本堂であろう。輪にして段々にともしたろうの灯が、黄色に燃えて描いたよう。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大火災だいかさいのときは、地震ぢしんとは無關係むかんけいに、旋風せんぷうおこちである。火先ひさきなかくぼ正面しようめんもつ前進ぜんしんするとき、そのまがかどには塵旋風ちりせんぷうづくべきものがおこる。また川筋かはすぢせつした廣場ひろば移動旋風いどうせんぷうによつておそはれやすい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
一時ひとしきり、吸い草臥くたびれて、長々と寝たるもあれば、そのあとへ、い寄って、灰色の滑らかな背をなかくぼに伸ばしながら両手で穴に縋るもあり、ぐッたりと腰を曲げてへそへ頭をつけるもあり、痩せた膝に
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)