円座えんざ)” の例文
旧字:圓座
垢離場こりば板敷いたじきにワラの円座えんざをしいて、数日つつしんでいた人々は、いちやくあたたかい部屋へやとうやうやしいもてなしにむかえられてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
げんに五間くらいの土間に、飯台はんだいが二た側、おのおの左右に作り付けの腰掛が据えられ、がまで編んだ円座えんざが二尺ほどの間隔をとって置いてある。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そのそば半襦袢はんじゅばん毛脛けずねの男たちが、養蚕ようさん用の円座えんざをさっさっと水に浸して勢いよく洗い立てる。からの高瀬舟が二、三ぞう
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
頸筋くびすじの皺がみんな集まって、ただ一つの円座えんざをつくり、皮でできた太いの上に、頭がはすかいにっているのだ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
あたえられた円座えんざを占めて、権右衛門は直垂の袖をかき合わせると、師冬は軽いしわぶきを一つした。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこでみんなは、まごつきながらも、もう一度立ちあがって、どうなり円座えんざの形にすわりなおした。しかしまだ十分ではない。不必要に重なりあって、顔の見えない塾生もある。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
お尻で円座えんざをもじりながらイライラしていると、あと二人というところで、「えろ遅なってしもて」なんて、すました顔でやって来たのはいいんだけど、半礼装に銀狐などという場ちがいではなくて
姦(かしまし) (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
板のほこりに円座えんざかさぬる 洒堂
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
越後守仲時と、左将監時益の両探題は、顔見合せながら、二つの円座えんざへ、わかれて着席したが
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこは薬戸納とだながあけてあるし、抽出ひきだしはみんな半ばまで引き出され、床板の上には袋入りの薬がいちめんに積んであるため、娘の坐る円座えんざをどこへ置くかに迷うくらいであった。
若い美しい行者は藁の円座えんざのようなものの上に坐って、手には幣束をささげていた。
半七捕物帳:26 女行者 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「いま終るところだ」と半太夫が云った、「そこに円座えんざがある、ちょっと待っていてくれ」
すさまじい博奕場ばくちばの光景が、彼の眼に映っていた。旗本くずれ、雑多な武家ごろ、医者風、旦那てい、坊主、女など——円座えんざを作って、なぐさみごとに、血眼を闘わせている。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すすめられた円座えんざにすわって、清盛は、父からの書面をわたした。——が、時信は
どの部屋も六帖であるが、窓は北に向いていてうす暗く、畳なしの床板に薄縁うすべりを敷いただけという、いかにもさむざむとした感じだった。窓の下に古びた小机があり、がまで編んだ円座えんざが置いてある。
冷気れいきのこもったうすぐらい拝殿はいでんに、二つの円座えんざもうけられた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と小侍がわらで編んである円座えんざという敷物をすすめた。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正成は、円座えんざを立った。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ここへ円座えんざを持て」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)