しゅん)” の例文
「これ/\、しゅん一、二郎じろう、じゃあなかった。英彦ひでひこ、いや、雅男まさお一寸ちょっとその新聞を取っておくれ。そのお前の側にあるのを」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
堀川のおしゅんを悪く気取って、世話しられても恩にぬは、あんまり義理が悪かろうと思うが……。ねえ、どんなもんだろう
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「おゝ、それはわしがしたんじゃで、わしが掃除しとく。かもうてくださるな、おいおしゅん——お俊というに、何しとるぞい」
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
と、断言したって、それは一寸良心が二三分間疑を挟んでみるだけで、おしゅん始め、列座の面々はきっと自分の手柄に感謝するにちがい無い。だから
新訂雲母阪 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
すなわち荒木古童あらきこどうが『残月ざんげつ』、今井慶松いまいけいしょうが『新曲洒しんきょくさらし』、朝太夫あさたゆうが『おしゅん伝兵衛でんべえ』、紫朝しちょうが『すずもり』のたぐいこれなり。
一夕 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「威は九州を鎮めて、八しゅんと呼ばれ、領治にも見るべきものがあるとか、聞き及んでいますが」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
灯影ほかげ明るい祇園町の夜、線香のけぶり絶々たえだえの鳥辺山、二十一と十七、黒と紫とに包まれた美しい若い男女が、美しい呂昇の声に乗ってさながら眼の前におどった。おしゅんのさわりはます/\好い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
きのこの話をしたらふと、おしゅんというひい婆さんを思い出しました。
しゅんの結婚も何時あるかなどとうわさした後で、三吉は辞して行った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この女はおしゅんと申しまして、年は二十四五でございます。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しゅん伝兵衛 (追抱)
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なつでもおしゅんでも小春こはるでも梅川うめがわでもいい訳であるが、お染という名が一番可憐かれんらしくあどけなく聞える。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
猿廻しの与次郎になれば如何にもその日暮らしの慌てものらしく、おしゅんになれば矢張りお俊らしく、れ/″\御工夫ごくふうをなさいます。芸事でも何でも詰まるところは頭でございますよ。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お夏でもおしゅんでも小春でも梅川でもいいわけであるが、お染という名が一番可愛らしく婀娜気あどけなく聞える。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「だしぬけに変なことを訊くようだが、おしゅんは相変らず達者かえ」
半七捕物帳:67 薄雲の碁盤 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)