)” の例文
「こういう店ではね」と彼は云った、「男と女の二人れの客には、気をきかせて給仕をしないものらしいよ、聞いたことだけれどね」
枡落し (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そこにはまた交通巡査のように冷静な猶太ユダヤ人の給仕長があった。通路に屯営とんえいして卓子テーブルくのを狙っている伊太利イタリー人の家族れがあった。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
然し今度はそういう道れもなく、独り旅を続けた。独りの旅は寂しいというよりも、勿体なくて仕方のない気持ちだ。
独り旅 (新字新仮名) / 若杉鳥子(著)
春の東海道筋、「足の勇」と二人れで、チャルメラの音を追った旅の馬鹿馬鹿しくも面白さは、いずれ他日の機会に申し上げる事もあるでしょう。
呪の金剛石 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ビヤトリスは一人の女れと共に紅い花をもっていた。そしてダンテの挨拶あいさつに対してしとやかな会釈を返してくれた。その後ビヤトリスは他にとついだ。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
十分おきに往来している電車のひびきと発車を知らす笛の音が聞えて来た。広い街路とおりへ折れて右側の人道を往くと、二人れのわかい男が前から街路とおりの真中を歩いて来た。
女の怪異 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
自動車が出て来たから此処ここの客かと思ふと、さうではなくて石段に尽きた道に失望して引返すのであつた。三人れが一組来た。男ばかりである。やうやく最初のメロンが運び出された。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
このパッカアが、もうそろそろ店を閉めようとして仕度したくしているところへ、窓のむこうに男女二人れの客が立った。男は、見たことがなかったが、女は、パッカアもよく知っていた。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
駕籠がゆき、馬に荷を積んだ馬子がゆき、浪人ふうの三人れが、彼を不審そうに見ながら通りすぎた。
おさん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
客はその後で、列車ボーイから、三人れの水兵が、田浦方面へ遊びに往っていて、帰りにその一人が帽子を無くしていたので、それがために、途中で轢死れきししていると云うことを聞かされた。
帽子のない水兵 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
運よく知りあいの同業の女が三人れで通りかかった。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
雨漏りの跡のあるすすけた天床で、行燈の光がその一部分をぼっと明るく染めていた。——二つ三つはなれた座敷で、笑い声が聞えた。夕方に来た四五人れの客である。
おさん (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
初めの一通は江戸をこきおろしたもので、冷静な畠中にも似ず、肩肱かたひじを張った文字で埋まっていた。——天秤棒てんびんぼうで盤台を担いだ魚屋の二人れが、町を突っ走っていくという。
滝口 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
昨日のかもは三人れで来た。外交員か集金人のようにみえ、ひるさがりにあらわれて大いに景気をあげた。三時すぎたころ帰ることになったが、中の一人が残ると云いだした。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そのとき土堤の上を、二人れの男が歩いていて、「ようよう」と声をかけた。酔っているのだろう、互いに支えあいながら、大きな声で、「ようようやけます」とどなった。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
もっとも千蔵は眺めた訳ではない、彼はその日城を下るとき、本丸の桝形ますがたの処で知らない人間にぎゅっと油を絞られた、向うから来た三人れとすれ違うとたん、「待て」と大きく呼止められた
評釈勘忍記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
万三郎がそう云ったとき、新しい五人れの客が入って来た。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)