“仂(はした)” の例文
囈言(うわごと)にも今度のその何か済まないことやらも、旦那様に対してお恥かしいことのようでもございますが、仂(はした)ない事を。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
母の前をも憚(はばか)らぬ男の馴々(なれなれ)しさを、憎しとにはあらねど、己(おのれ)の仂(はした)なきやうに慙(は)づるなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
お勢は一旦(いったん)は文三を仂(はした)なく辱(はずかし)めはしたものの、心にはさほどにも思わんか、その後はただ冷淡なばかりで、さして辛(つら)くも当らん※が、それに引替えて、お政はますます文三を憎んで
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
(あゝ、然(さ)う、)と会心(くわいしん)の笑(ゑみ)を洩(も)らして婦人(をんな)は蘆毛(あしげ)の方(はう)を見(み)た、凡(およ)そ耐(たま)らなく可笑(をか)しいといつた仂(はした)ない風采(とりなり)で。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
と優容(しとやか)な物腰(ものごし)。大概(たいがい)、莟(つぼみ)から咲(さ)きかかったまで、花の香(か)を伝えたから、跛も、めっかちも聞いたであろうに、仂(はした)なく笑いもせなんだ、つつましやかな人柄(ひとがら)である。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(美津(みつ)、下駄(げた)を買(か)うてやるか。)と言(い)つて見(み)たが、默(だま)つて返事(へんじ)をしなかつた。貞淑(ていしゆく)なる細君(さいくん)は、其(そ)の品位(ひんゐ)を保(たも)つこと、恰(あたか)も大籬(おほまがき)の遊女(いうぢよ)の如(ごと)く、廊下(らうか)で會話(くわいわ)を交(まじ)へるのは、仂(はした)ないと思(おも)つたのであらう。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)