仁人じんじん)” の例文
小生の知る陶謙は、世に稀な仁人じんじんです、君子です。——ご尊父がむごたらしい難に遭われたのは、まったく陶謙の罪ではなく、張闓ちょうがい仕業しわざです。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほどこして必ずほうある者は、天地の定理ていりなり。仁人じんじんこれを述べてもっひとすすむ。ほどこしてほうのぞまざる者は、聖賢せいけん盛心せいしんなり。君子くんしこれそんして以てすくう」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
が、またこの飯事が、先生、あの二人でなくッちゃ、英雄にも豪傑にも、志士仁人じんじんにも、狂人にも、馬鹿にも出来ない、第一あなたにも私にも出来ませんて。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大震はブウルジヨアとプロレタリアとをわかたず。猛火は仁人じんじん溌皮はつぴとを分たず。自然の眼には人間ものみも選ぶところなしと云へるトウルゲネフの散文詩は真実なり。
かくて志士しし仁人じんじんに謀りて学資の輔助ほじょを乞い、しかる上にて遊学ののぼらばやと思い定め、当時自由党中慈善の聞え高かりし大和やまとの豪農土倉庄三郎どくらしょうざぶろう氏に懇願せんとて
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ノーベル賞金を辞された先生に不満をいだかれたり、何万ルーブルの為に先生の声を蓄音器に入れさせようとしたり、其外種々仁人じんじんとしても詩人としても心の富、霊の自由
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
劉玄徳りゅうげんとくは、仁人じんじんである。故主の墳墓の土も乾かぬうちに、曹操へ降を乞い、国を売るの賊、汝らこそしからん。——いで、魏延が城門をあけて、玄徳を通し申さん」
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
志士しし仁人じんじんもまたかかる醜態を演じて、しかも交誼こうぎを厚うする方便なりというか、大事の前に小欲を捨つるあたわず、前途近からざるの事業を控えて、嚢底のうてい多からざるの資金を濫費らんぴ
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
早く立憲の政体を立て、人民をしてまつりごとに参せしめざる時は、憂国の余情あふれて、如何いかなる挙動なきにしも非ずと、種々当路者に向かって忠告するも、馬耳東風はじとうふうたる而已のみならず憂国の志士しし仁人じんじん
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)