二種ふたいろ)” の例文
剥げた塗り膳に二種ふたいろばかりの、食物らしいものが載っている。——それを捧げた仇っぽい年増が、疑わしそうに眼をひそめ、すぐの背後に立っていた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
兵蔵は十年一日の如く、きたない狭い店の片隅で、ぶつりぶつりと蝋を煮て造り上げた大中小の蝋燭を別々の箱の中に納めて、赤、白との二種ふたいろを造っている。
蝋人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二種ふたいろくはゆるゆゑ如何程おも癲癇てんかんなりともたゞ一二服を服用すれば忽地たちまち全快なさんことしも沸湯にえゆを注ぐに等き世にも怪有けうなる奇劑きざいなるは是迄夥多あまたの人に用ゐ屡々しば/\功驗こうけん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いはのあたりは、二種ふたいろはなうづむばかりちてる……其等それらいろある陽炎かげらふの、いづれにもまらぬをんな風情ふぜいしたなかに、たゞ一人いちにんこまやかにゆきつかねたやうな美女たをやめがあつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どんな時、誰がどんな病気でも、あんぽんたんが薬をもらってくる時、変だなあとおもうのは、練薬と膏薬こうやく二種ふたいろだけだった。練薬は曲物まげものに入れ、膏薬は貝殻かいがらに入れて渡した。
二種ふたいろの靴跡は、或は強く、或は弱く、曲ったり踏込んだり、爪先を曳摺ひきずる様につけられたかと思うとコジ曲げた様になったりしながら、激しく入り乱れて崖の縁迄続いている。
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
「誰からのいであろうと、織田家に加担する意志はない。小六の返書に二種ふたいろはないのだ」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つぎに子供というものは、二種ふたいろあるおかずの中でも、一方が非常に気にいると、ほかの一つは見向きもしないで、よけいに気にいったほうのばかりを、ずんずん食べてしまうものです。
女中訓 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
娘に二種ふたいろ何処にごわせう
雨情民謡百篇 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
娘に二種ふたいろ何処どこにごわせう
都会と田園 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)