“二更(にこう)” の例文
なかよく連れだってぶらりぶらり八丁堀(はっちょうぼり)のお組屋敷へ帰りついたのが、かれこれもう夜も二更(にこう)に近い五ツ下がり刻限でした。
とうとう初夜(しょや)の鐘が鳴った。それから二更(にこう)の鐘が鳴った。二人は露に濡れながら、まだ寺のほとりを去らずにいた。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
草鞋(わらじ)の緒(お)でも切れたのではないか。範宴は浄土寺の聚落(むら)あたりで、辻堂の縁にしばらく休んでいた。禅林寺の鐘の音が、吠える風の中で二更(にこう)を告げた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
唐(とう)といいまして、人の噂では、匪徒(ひと)の仲間入りをしているという男ですが、その男が二更(にこう)のころに、酒に酔って歩いておりますと、その晩は月があって
昨夜の二更(にこう)、大雨の最中に、しかじかの処を廻って居りますと、忽ちに一つの怪物が北の方角から参りました。上は四角で平らで、蓆(むしろ)のようで、糢糊(もこ)として判りません。
ところが二更(にこう)の頃になって、かの加藤清正の屋敷あとといわれる浜屋の家の裏木戸があくと、そこがすでに堀になっていて、刎橋(はねばし)が上げてある、そこへ、静かに立ちあらわれた物影がある。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ぐらぐらと揺れる一銭橋(いちもんばし)と云うのを渡って、土塀ばかりで家(うち)の疎(まばら)な、畠も池も所々(ところどころ)、侍町(さむらいまち)を幾曲(いくまが)り、で、突当(つきあた)りの松の樹の中のその邸(やしき)に行く、……常さんの家(うち)を思うにも、恰(あたか)もこの時、二更(にこう)の鐘の音(おと)
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
秀吉の扈従(こじゅう)たちさえ、当然、泊るものと思っていたのに、秀吉は、夜も二更(にこう)の頃というのに、突然
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、ある夜の二更(にこう)(午後九時—十一時)に達する頃、賊は又もや獄卒にささやいた。
その夜も二更(にこう)とおぼしき頃に、門をたたいて駈け込んで来た者がある。それは一個の美少年で、手に一つの嚢(ふくろ)をさげていた。徐四が怪しんで問うまでもなく、少年は泣いて頼んだ。
二更(にこう)は過ぎた、やがて、三更——
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大定(たいてい)の末年のある夜、かれは一羽の鴿(はと)を餌(えさ)として、古い墓の下に網を張り、自分はかたわらの大樹の上に攀(よ)じ登ってうかがっていると、夜の二更(にこう)(午後九時—十一時)とおぼしき頃に
夜は二更(にこう)。星ひとつ見えない。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
橙(だいだい)の実十余個を取って堂下にころがして置いて、二人は堂にのぼって酒を飲んでいると、夜も二更(にこう)に及ぶころ、ひとりの男が垣を踰(こ)えて忍び込んで来たが、彼は堂下をぐるぐる廻りして