主税ちから)” の例文
「かげうすき秋のみか月出るよりはや山のはに入むとぞおもふ。」書牘には後の歌を見て、田内主税ちからの詠んだ歌が併せ記してある。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
山岸主税ちからは両国広小路の、例の曲独楽の定席小屋の、裏木戸口に佇んで、太夫元の勘兵衛という四十五六の男と、当惑しながら話していた。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
本多政朝、政勝の二代に仕えた重臣で、石川主税ちからという人物がある。或る時、武蔵を午餐ごさんに招いて、他の客と共に歓談した。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
主税ちからどのとも会いました、もちろん、二人とも私の身分と用向きをよく承知しておられ、紛らわしいような点は少しもございませんでした。
続いてドンドン粗略ぞんざいに下りたのは、名を主税ちからという、当家、早瀬の主人で、直ぐに玄関に声が聞える。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とにかく、彼らは、一死をぶんとして満足・幸福に感じて屠腹した。その満足・幸福の点においては、七十余歳の吉田忠左衛門も、十六歳の大石主税ちからも、同じであった。
死刑の前 (新字新仮名) / 幸徳秋水(著)
申付られし身なれば此程の有樣ありさまを見て深く心を痛め主人主税ちから之助へ種々藤五郎の詫言わびごとをなし出らう有べきやう申しければ主税之助大いに立腹りつぷくし又しても/\藤五郎の事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いまひとり加藤主税ちからというは溝口みぞぐち派で、有名な道場荒し、江戸中に響いていた達者で剛力ごうりきです。
そこで同志の心を安んずるために、まずせがれ主税ちからに老巧間瀬久太夫を介添かいぞえとして、大石瀬左衛門、茅野かやの和助、小野寺幸右衛門なぞとともに、自分に先立って下向させることにした。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
かれの甥、垣見左内と変称して、そばでにこにこしている少年は、主税ちからだ。
口笛を吹く武士 (新字新仮名) / 林不忘(著)
主税ちからを目掛けて寄せた時、遥かあなたの木間から、薄赤い一点の火の光が、鬼火のように不意に現われて、こなたへユラユラと寄って来た。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
其外岡本忠次郎君、田内(か川)主税ちから、土屋七郎なども参候よし、みな私知音之人、金輪へ参候時何の沙汰もなく残念に候。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
くりやでは、かゆを煮、式台には、妻女のおりくだの、主税ちからだの、召使たちもこぞって出ていた。そして駕籠を見ると
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国老就任の挨拶なので、酒井家では老臣の関主税ちからが接待に出、兵部と甲斐とは熨斗目麻裃のしめあさがみしもに着替えた。
當殿たうどのには左右とかく無理むり非道ひだうの取計ひなるにより此後御兄弟の御身の上如何樣の儀出來んも知れず御兩人を何分御頼み申と涙を流して内々相談致しければ此事を主税ちから之助に告る者ありて種々惣右衞門を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この間に早瀬主税ちから、おつたとともに仮色使と行逢ゆきあいつつ、登場。
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この頃亭から少し離れた、閉扉の館のそばの木立の陰に、主税ちからとあやめとが身体からだをよせながら、地に腹這い呼吸いきを呑んでいた。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
同じく連坐せられた十津川の士上平うへひら(一にあやまつて下平に作る)主税ちからは新島に流され、これも還ることを得た。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
父の惰眠だみんを醒ますように、裏の方では、長男の主税ちからと次男の吉千代とが、剣道の稽古をはげんでいるらしい。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——ゆうべのちょうどいまごろで、旦那さまは庄野主税ちからさまと御対談ちゅうでした」
日日平安 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「英吉君には御懇親に預ります、早瀬主税ちからと云うものです。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
主税ちからは、どうして良雪和尚が、永年親しくしている父に対して急にそんな仔細な眼で見たり性格を分解してみたりしようとしているのか、その気持を薄々知ることができた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菅茶山の蘭軒に与へた丁丑八月七日の書牘に、王子金輪寺の混外こんげが事に連繋して出てゐる人物の中、わたくしは既に石田梧堂と岡本豊洲とを挙げた。剰す所は田内主税ちからと土屋七郎とである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
巻野 主税ちから 別家遠江守康時の五男
菊千代抄 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たそがれ迫る頃おい、さきの残党狩りの部将山部主税ちからは、果たして、ふたたび門を叩いた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、大石主税ちから短冊たんざくが一葉封じてあった。