両脇りょうわき)” の例文
旧字:兩脇
夜寝るときも葉子は二人を両脇りょうわきにかかえるか、眠るまで咲子だけを抱くようにして、童謡をうたったり、童話を聞かせたりした。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その中へ入ろうという門の両脇りょうわき警手けいしゅの僧が四人居るですが、これは別段長い棒を持たない。ただ短かな物を持って居るだけ。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それではこの川をまたずんずんのぼっておいでになりますと、てつもんがあって、もん両脇りょうわき黒鬼くろおに赤鬼あかおにばんをしています。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
肩や両脇りょうわき太紐ふとひもで荒くかがって風のけるようにしてある陣羽織じんばおり式の青海流の水着をぐと下から黒の水泳シャツの張り付いた小初の雄勁ゆうけいな身体がき出された。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
よく見るとその男は、ぼくの妹と弟とを両脇りょうわきにしっかりとかかえていた。妹も弟も大きな声を出していていた。ぼくはいきなりその大きな男は人さらいだと思った。
火事とポチ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
ふつうは連尺れんじゃくという字を書いて、これを背負い枠の両脇りょうわきに取りつけたひものことだといい、また山林のほうで働く人たちは、連尺はただ長いロープのことだともいっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この本尊を中心にして、両脇りょうわきには周知のごとく日光菩薩ぼさつ月光がっこう菩薩とが佇立している。いずれも鮮かに彩色されていたそうだが、いまは剥落はくらくして灰白色になってしまった。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
連中のうちで、コオルマンひげを生した色男ハンサムボオイが真中になり、アメリカむすめが、両脇りょうわきで、カメラに入りましたが、あとで出来上がったのをみたら、ぼくの鼻がずいぶん低く、いやだった。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
と、博士は何者かに両脇りょうわきからかかえあげられたようになり、自分の心に反して、ふらふらと舞台を下手へ下がっていった。そしてそこにおいてあった椅子の一つへ、腰を下ろしてしまった。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
両脇りょうわきに子供をひきつけ、依怙地いこじなほど身体をこわばらせている石のようなお安の後姿を、主水は歎息たんそくするような気持で見まもった。扶持ふちを離れたといっても、明日の生計たつきに困るわけではない。
鈴木主水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ここの城はなかなか堅固に出来て居りまして、その南方に当り両脇りょうわきの山に沿うて大いなる石塀いしべいが建てられてありその真中まんなかに門が二つあるです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
一人は両脇りょうわきから上半身を抱え、一人は脚を支えてそろそろ段梯子だんばしごくだり、病床近くへつれて来たが、時子は苦しい呼吸の下から、姉の助かったことをよろこび、今まで世話になった礼を言い
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
尻込みする政を、両脇りょうわきから引立てて、捜査に取懸った。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
博士は、ちょっとこわがる二人を両脇りょうわきかか
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)