両端りょうたん)” の例文
旧字:兩端
するとそこへ、どこからやってきたものか、一人ひとりのじいさんのあめりが、天秤棒てんびんぼう両端りょうたんに二つのはこげてチャルメラをいてとおりかかりました。
空色の着物をきた子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひっくり返ってもつかえはない。物には両面がある、両端りょうたんがある。両端をたたいて黒白こくびゃくの変化を同一物の上に起こすところが人間の融通のきくところである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして何処どこやらに唐風からふうなところがあります。ずその御門ごもんでございますが、屋根やね両端りょうたん上方うえにしゃくれて、たいそう光沢つやのある、大型おおがた立派りっぱかわらいてあります。
僕は肩から胸へ釣った記録板きろくばんと、両端りょうたんをけずった数本の鉛筆とを武器として学究者らしい威厳いげんを失わないように心懸けつつ、とうとう「信濃町」駅のプラットホームへ進出した。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼等は死骸と一緒に別間べつまに去った人々のあとに残って、長持の両端りょうたんから、蓋の裏に現れた影の様なものに異様な凝視をつづけていた。おお、そこには一体何があったのであるか。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
なわ垂繩たらしをつけた十尺ばかりの角材を海におろし、両端りょうたんをマレー人に支えさせておいてモニカを水に入れた。垂繩たらしにつかまらせると、四人のマレー人が前衛ぜんえい後衛こうえいになって、岸をめがけて泳ぎだした。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
いくら連続していてもその両端りょうたんでは大分ちがっています。太陽スペクトルの七色をごらんなさい。これなどは両端に赤とすみれとがありまん中に黄があります。ちがっていますからどうも仕方ないのです。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
上は白金巾しろかなきんで包んで、細い杉丸太を通した両端りょうたんを、水でも一荷いっか頼まれたように、容赦なくかついでいる。その担いでいるものまでも、こっちから見ると、例のうたを陽気にうたってるように思われる。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)