下積したづみ)” の例文
実は俺も生れてから四十五年、ここへ坐っったが、イヨイヨこのうちへ居ると四十六の年が取れん位、借金の下積したづみになっとる。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
仏蘭西フランスなどに在つては何かの機会で世にあらはれた詩人の下積したづみに成つて、おいも若きも多数の作家はまつたうかぶ瀬を失ひ、勢ひヌエの様に諦めを附けてひとりを楽しむ外は無いのである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
あの暗灰色の菱形ひしがたうおを、三角形に積んで、下積したづみになったのは、軒下の石にあいを流して、上の方は、浜の砂をざらざらとそのままだから、海の底のピラミッドを影でのぞあたらしさがある。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
干菓子の方は下積したづみに残って居りまする。
ことに世の中の下積したづみになった温柔おとなしい人間が、思いがけない幸運に出会ったり、おかみから御褒美ほうびを戴いたりする場面にぶつかると彼は、人に気付かれるのを恐れるかのように
老巡査 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ときに、一名いちめい弘法こうぼふ露呈あらはなことは、白膏はくこう群像ぐんざうとまではかないが、順禮じゆんれい道者だうじやむらむすめ嬰兒あかんぼいたちゝく……ざい女房にようばう入交いれまじりで、下積したづみ西洋畫せいやうぐわかは洗濯せんたくする風情ふぜいがある。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)