三菱みつびし)” の例文
これも、友達である三菱みつびし荘田しょうだ氏の令嬢である宮田夫人が、牛込余丁町うしごめよちょうまちの邸の隣地に、朱絃舎の門標を出させる家を造ってくれた。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
その時分に比すれば大名小路だいみょうこうじの跡なるまるうち三菱みつびしはらも今は大方赤煉瓦あかれんがの会社になってしまったが、それでもまだ処々に閑地を残している。
淡谷庄二郎しょうじろうさんは、ひとりの書生しょせいをつれて、自動車で、まるうち三菱みつびし銀行の金庫から、ふろしきにつつんだ、小さいはこを取り出して、おうちへ帰りました。
塔上の奇術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
吾人は貞淑ていしゅくなる夫人のために満腔まんこうの同情をひょうすると共に、賢明なる三菱みつびし当事者のために夫人の便宜べんぎを考慮するにやぶさかならざらんことを切望するものなり。……
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一昨年法科を出て、三菱みつびしへ入ってから、今まで相当な給料をもらっている。その上、郷国くににある財産からの収入を合わすれば、月額五百円近い収入を持っている。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「……三菱みつびしドックにお諏訪すわの月見、花はカルルス桜に菊人形、夜は丸山、寺もないのに大徳寺……」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
三菱みつびしへ学徒動員で通勤している二人の中学生のおいも、妙に黙り込んで陰鬱いんうつな顔つきであった。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
ちっと気を大きくして山気やまきを出せ、山気を出せ、あんなけちけちした男に心中立て——それもさこっちばかりでお相手なしの心中立てするよりか、こら、お豊、三井みつい三菱みつびし
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
三井みつい三菱みつびしを除けば日本ではまあ彼所あすこ位なもんですから、使用人になったからといって、別に私の体面に関わる事もありませんし、それに仕事をする区域も広いようですから
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
高麗橋こうらいばし筋にある三菱みつびし系の某会社に勤めていた関係から、辰雄が蒔岡家へ養子に来た当座は、まだ独身で始終遊びに来、鶴子の妹達とも馴染なじんでいたものであったが、その後結婚し
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかしまた時として向こう河岸がしにもやっている荷物船から三菱みつびしの倉庫へ荷上げをしている人足の機械的に動くのを見たり、船頭の女房がともで菜の葉を刻んだり洗ったりするのを見たり
丸善と三越 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
まるうち三菱みつびしが原で、大きな煉瓦の建物を前に、草原くさはらに足投げ出して、悠々ゆうゆうと握飯食った時、彼は実際好い気もちであった。彼は好んで田舎を東京にひけらかした。何時いつも着のみ着のまゝで東京に出た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
不思議と彼女に好い親類のあることがその後だんだんわかって来たのであったが、小夜子はそれを鼻にかけることもなかった。三菱みつびしの理事とか、古河銅山の古参とか、または大阪の大きな工場主とか。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
山本喜誉司やまもときよし これも中学以来の友だちなり。同時に又姻戚いんせき一人ひとりなり。東京の農科大学をいで、今は北京ペキン三菱みつびしに在り。重大ならざる恋愛上のセンテイメンタリスト。
学校友だち (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「そう/\。一寸御紹介して置きますわ。この方、法学士の渥美信一郎さん。三菱みつびしへ出ていらっしゃる。それから、茲にいらっしゃる方は、——そう右の端から順番に起立していたゞくのですね、さあ小山さん!」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
と三輪さんは三菱みつびし三井みついも差別がない。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
秦豊吉はたとよきち これも高等学校以来の友だちなり。松本幸四郎まつもとかうしらうをひ。東京の法科大学をいで、今はベルリンの三菱みつびしに在り、善良なる都会的才人。あらゆる僕の友人中、最も女にれられるが如し。
学校友だち (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
この話の主人公は忍野半三郎おしのはんざぶろうと言う男である。生憎あいにく大した男ではない。北京ペキン三菱みつびしに勤めている三十前後の会社員である。半三郎は商科大学を卒業したのち二月目ふたつきめに北京へ来ることになった。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
三菱みつびし会社員忍野半三郎は脳溢血のういっけつのために頓死とんししたのである。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)