三歳みっつ)” の例文
「子供はまだ三歳みっつ四歳よっつじゃあどうにもならねえが、そのおふくろというのはまだ十九だそうだから、間違いがあっちゃあ可哀そうだ」
半七捕物帳:10 広重と河獺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
小供はもう三歳みっつになっているからしっかりした婆やを雇えば好い、今晩まず別居の宣言をしてみよう、気の弱いことではいけない。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「フウン——お前さんが五歳いつつで、菊ちゃんが三歳みっつ——そう御悧好おりこうじゃ、御褒美ごほうびを出さずば成るまい——菊ちゃんにも御土産おみやが有りますよ」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
両国広小路の人混みを離れた一人の大男、三歳みっつばかりになる男の子を十文字に背負って、極彩色の花の中宿なかやどの日傘をさし、両国橋のたもとまで来て
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
折ふしは里親と共に来てまわらぬ舌に菓子ねだる口元、いとしや方様に生き写しと抱き寄せて放し難く、つい三歳みっつの秋より引き取って膝下ひざもとそだつれば
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
奥様の方から無理に勧めて置いたお秋様がもうけました若様が、お三歳みっつという時に奥様がお逝去かくれになりましたから、お秋様はお上通かみどおりと成り、お秋の方という。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
やがて、生信房は、法衣ころものすそもたもとこがされた姿で、三歳みっつばかりの幼子おさなごを引っ抱えて駈け戻ってきた。その上に彼はまた、ほかの七歳ななつばかりの子を背中に負い
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
捨てた父母は何者か知らぬが、巳代吉が唖ながら心霊しんれい手巧しゅこう職人風のイナセな容子を見れば、祖父母の何者かが想像されぬでもない。巳代吉は三歳みっつまでは口をきいた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その女の子供は、おそらくこの世で見らるる最もきよい姿をしたものの一つであった。二歳ふたつ三歳みっつの女の児だった。服装みなりのきれいなことも前の二人の子供に劣らなかった。
何でも二歳ふたつ三歳みっつの子供がありましたがその可愛盛りの愛児がこの間死んだので、私の妻はほとんど狂気のごとくに歎き私も漁に出掛けても少しも面白くないという愁歎しゅうたん話。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
よしんば長崎に居たことがあるにしても、それはお崎が三歳みっつの時でなければならないのです。
まだ三歳みっつほどの男の子が、百姓女みたいに頭をくるまれて、親指だけ分かれた大きな手袋をして、舞いかかる雪片を舌で捕えようとして笑っている。そこへ向うから粗朶を積んだ車が来る。
(新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それが漸次しだいちかづくと、女の背におぶはれた三歳みっつばかりの小供が、竹のを付けた白張しらはりのぶら提灯ぢょうちんを持つてゐるのだ。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
其の時にお熊はなんでもおたねはらんで居たがね、屋敷は潰れたから、仕方がねえので深川へ引取ひきとり、跡は御家督ごかとくもねえお前さんばかり、ちょうどお前が三歳みっつの時だが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「この子の父と申しますのが、あなた、弾正右衛門兵衛と申しまして、つまり、わたくしの連合いなのでございますが、三十八歳の時に、これが三歳みっつの年に歿してしまいました」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おかみは、巳代が三歳みっつまでよく口をきいて居たら、ある日「おっかあ、お湯が飲みてえ」と云うたを最後の一言いちごんにして、医者にかけても薬を飲ましても甲斐が無く唖になって了うた、と言った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
うかい、私は初めて伯父さん聞いたがねえ、だがねえ、私が旗下の二男でも、家が潰れて三歳みっつの時から育てゝくれゝば親よりは大事な伯父さんだから、もう一度ひとたびくなって恩報おんがえしに
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その女の人は木場の材木問屋の通い番頭さんのおかみさんだそうで、まだようよう十九で、去年の秋ごろにお嫁に来たんだそうですが、その人は二度添いで、今年三歳みっつになる先妻の子供があるんです。
半七捕物帳:10 広重と河獺 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)