-
トップ
>
-
よツや
跫音も
聞えぬばかり——
四谷の
通りから
穴の
横町へ
續く、
坂の
上から、しよな/\
下りて
來て、
擦違つたと
思ふ、と
其の
聲。
先ず一番先に
四谷の
金物商へ参りましたが一年程居りまして
駈出しました、それから
新橋の
鍜冶屋へ参り、三
月程過ぎて駈出し、又
仲通りの
絵草紙屋へ参りましたが、十
日で駈出しました
其の
枝の
所々、
濁つた
月影のやうな
可厭な
色の
靄が
搦んで、
星もない……
山深く
谷川の
流に
望んだ
思ひの、
暗夜の
四谷の
谷の
底、
時刻は
丁ど一
時頃。
こゝな
四谷の
谷底に、
酷い
事、
帶紐取つて、あか
裸で
倒されてでも
居りますのが、
目に
見えるやうに
思はれました。