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はゝこぐさ
「
聖母の
手套」、
刺罌粟、
母子草、どんなに
眞白な手よりも、おまへたちの
方が、わたしは
好だ。
滅んだ花よ、むかしの花よ。
吾は此方に蒲公英、
母子草、
金鳳花、
金仙花、福壽草など栽ゑんは
色彩如何に。見よ、光よ。
色彩美からずや。
母子草、すいた人の指にはめた脆い
蛋白花、
寢室でもつて、月を映してみるつもりか。
さうしては
又凡ての
幼いものゝ
特有で
凝然として
居られなくて
可憐な
尾をひら/\と
動かしながら、
力に
餘る
水の
勢にぐつと
持ち
去られつゝ
泳いで
居る。
與吉は
鼠麹草の
花を
水へ
投げた。
「それ
見ろな
怒られつから、そら
此處にえゝものが
有つた」おつぎは
田圃にある
鼠麹草の
花を
挘つて
筵へ
載て
遣つた。さうして
又危いやうにそうつと
田へおりた。
與吉は
只鼠麹草の
花を
弄つて
居た。
鼠麹草の
花が
皆投げ
竭されて
與吉は
又おつぎを
喚んだ。