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しよせき
與吉は
學校から
歸つてひつそりとした
家に
只卯平がむつゝりとして
居るのを
見ると
威勢よく
駈けて
來たのも
悄げて
風呂敷包の
書籍をばたりと
座敷へ
投げて
庭へ
出て
畢ふ。
卯平は
會毎に
三人は
相談して
必ず
月に
一度の
贈品を
大島小學校に
送る、それが
必ずしも
立派な
物ばかりではない、
筆墨の
類、
書籍圖畫の
類などで、オルガン
一臺を
寄送したのが
一番金目の
物であつた。
「しらばつくれて」おつぎは
斜に
脊負つた
書藉の
上から
與吉をぱたと
叩いた。
與吉は
霜の
白く
掩た
庭を
小さな
下駄でから/\と
鳴らしながら
遁げるやうに
駈けて
行つた。