黒焦くろこ)” の例文
貝塚に於て發見はつけんさるる獸骨貝殼の中には往々わう/\黒焦くろこげに焦げたるもの有り。是等はおそらく獸肉ぢうにくなり貝肉なり燒きて食はれたる殘餘ならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
女中ぢよちう一荷ひとに背負しよつてくれようとするところを、其處そこ急所きふしよだと消口けしぐちつたところから、ふたゝ猛然まうぜんとしてすゝのやうなけむり黒焦くろこげに舞上まひあがつた。うづおほきい。はゞひろい。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ははあ、だいぶひびいたね、これでごく弱いほうだよ。わしとも少し強く握手すればまあ黒焦くろこげだね。」
月夜のでんしんばしら (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「つまり、仏頂寺があれから、私とあなたというもののなかを嫉くことといったら、とても黒焦くろこげなんですけれど、ああいう男ですから、顔には現わしません」
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
乗組員は全部焼死して、黒焦くろこげの機械の残骸ざんがいが畑の中で発見されたのであった。その重大事件には早速査問会が開かれて、先生もその一員に加えられたのである。
あくる日もまだ余燼よじんめきっていなかった。が、寄手の大将菊池武敏は、さっそく、ここへ来て、妙恵入道以下の黒焦くろこげの死体をとくと実検して、そして言った。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
禿鷹が上っていた山こそ国中で一番高い山で、そこにらいの神が雷を落としたものですから、頂上の岩の上にいた禿鷹は、それに打たれて、黒焦くろこげになって死んでしまったのです。
コーカサスの禿鷹 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
君を黒焦くろこげにしちゃっちゃ、元も子もなくなるからね。ね。解ったろう。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
行く行く見れば、兵の死骸や黒焦くろこげの男女の死体もころがっている。あきらかにこれはいくさ酸鼻さんびであった。秦明は我を忘れて馬にムチをくれ、一気に州城の城門下まで飛ばして行った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この暴風に、この火の手、一刻を争わねば、森の中で黒焦くろこげはきまっている。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)