鴻恩こうおん)” の例文
... しめて来たまえ(大)夫や実に難有ありがた畢生ひっせい鴻恩こうおんだ」谷間田は卓子ていぶるの上の団扇うちわを取り徐々しず/\と煽ぎながら少し声を低くして
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
汝は世々東海のひんにいて、家祖みな漢朝の鴻恩こうおんをこうむり、汝また、はじめ孝廉こうれんにあげられてちょうに仕え、さらに恩遇をたまわりてようやく人とる。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつは先人の千辛万苦せんしんばんくして我々後進の為めにせられたる其偉業鴻恩こうおんむなしふするものなり、就ては方今の騒乱中に此書を出版したりとて見る者もなかる可しといえど
蘭学事始再版序 (新字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
現代の能楽師の如く流祖代々の鴻恩こうおんを忘れて、浅墓な自分の芸に慢心し、日常の修養を放漫にする。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
ことは当家の主人、お尋ねにあずかりました萩原仁右衛門、壮年の頃中納言様に仕え、数々の鴻恩こうおんにあずかりましたもの。久しぶりにてご消息に接し、お懐しく存じました。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
徳川氏と存亡を共にする以外に、この際、情誼じょうぎのあるべきはずがないと主張し、神祖の鴻恩こうおんも忘れるような不忠不義のやからはよろしく幽閉せしむべしとまで極言するものもある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
安んじて下さい。小生とても、なんで漢室の鴻恩こうおんを忘れましょうや。今いったのは戯れです。——だが、尊台が大事を
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呉家ののちに生るゝ男女なんにょにして此の鴻恩こうおんを報ぜむと欲せば、深く此旨を心に収め、法事念仏を怠る事なかれ。事他聞たもんを許さず、あやまつて洩るゝ時は、あるいは他藩のうらみを求めむ事を恐る。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかるに君が家の蘭学事始は我輩学者社会の宝書なり、今これを失うては後世子孫、我洋学の歴史を知るによしなく、かつは先人の千辛万苦して我々後進のめにせられたるその偉業鴻恩こうおんを空うするものなり
蘭学事始再版之序 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そして主上もこの尊氏をかくべつお目かけて下されいるものと、鴻恩こうおん、忘れたことはありませぬ
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尊氏の今日こんにちあるのは、一に先帝のおかげでした。まことに、鴻恩こうおんのほかのものではありません。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鴻恩こうおん、いつの日か忘れましょう。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)