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鮮紅
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からくれなゐ
今考へると、それが
矢張り、あの
先刻の
樹だつたかも
知れません。
同じ
薫が
風のやうに
吹亂れた
花の
中へ、
雪の
姿が
素直に
立つた。が、
滑かな
胸の
衝と
張る
乳の
下に、
星の
血なるが
如き
一雫の
鮮紅。
鮮紅と、
朱鷺と、
桃色と、
薄紅梅と、
丹と、
朱と、くすんだ
樺と、
冴えた
黄と、
颯と
點滴る
濃い
紅と、
紫の
霧を
山氣に
漉して、
玲瓏として
映る、
窓々は
恰も
名にし
負ふ
田毎の
月のやうな
汽車の
中から