露台バルコニー)” の例文
旧字:露臺
ふと見ると、その窓側の露台バルコニーに、古びた長椅子の上に、真鍮のボタンの付いてゐる上衣を着た一人の老人が腰掛けてゐました。
首相の思出 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
外壁に立って呶号どごうする町の英雄、こわごわ露台バルコニーから覗いている王女の姿が一つぽっちりと見える——時間こそは何という淋しい魔術であろう。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
政庁の露台バルコニーには州知事をはじめサンダカン市の名誉職達が花束を持ちながら並んでいる。道路には警官が立ち並んで大声で群集を制している。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あなたはうて居られた彼露台バルコニーゆうべ! 家の息達と令嬢とマンドリンをいて歌われた彼ヹランダの一夜! 彼ヷロンカの水浴! 彼すずしい
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
美奈子が、黙つたまゝ、露台バルコニーの欄干に、長く長く倚つてゐるときなど、母は心配さうに、やさしく訊ねた。が、そんなとき
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
それを見すまして私は力一杯に老人を四階の露台バルコニーから下に引きずり落しました。お蔭で老人は助かりました。
かのシムラが図書閲覧室やペリティの店の露台バルコニーに囲まれながら見えてきた折りから——私はずっと遠くのほうで誰かが私の洗礼名クリスチャンネームを呼んでいるのに気がついた。
そして、御殿の露台バルコニーには、おひめさまたちが立っていました。しかし、どのお姫さまも、ヤルマールが前にあそんだことのある、よく知っている、小さな女の子たちばかりでした。
其中に愈々いよ/\初日は来た。して丁数ちやうすうは進んで彼が虎となつて現はるべき三幕目となつた。彼は笑い顔一つせずに虎の縫ぐるみを着て、知らせの木と共に球江邸の露台バルコニーうへに横たはつた。
(新字旧仮名) / 久米正雄(著)
遠い野から、草の刈られた牧場のかおりが漂ってき、隣の露台バルコニーから、一はちの丁字の花のにおいがしてきた。空気はよどんでいた。天の川が流れていた。一本の煙筒の真上に、北斗星が傾いていた。
ある蒸し暑いあまもよいの、舞台監督のT君は、帝劇ていげき露台バルコニーたたずみながら、炭酸水たんさんすいのコップを片手に詩人のダンチェンコと話していた。あの亜麻色あまいろの髪の毛をした盲目もうもく詩人のダンチェンコとである。
カルメン (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
舞台正面は座敷の縁、二階から突き出た露台バルコニー。庭を距てゝ狭い道路
五月晴れ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
美奈子が、黙ったまゝ、露台バルコニーの欄干に、長く長くっているときなど、母は心配そうに、やさしくたずねた。が、そんなとき
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
あゝ老人がゐる。四階目の露台バルコニーに老人が一人残つてゐる。どうかして助けてやらなくつちやと、口々に我鳴りたてるが、誰一人どうしていゝかは解らないのです。
夜露にぬれた花園の薔薇は、露台バルコニーに立つた私の着物に雨のやうに香水をふりそゝぎました。その夜の私の姿はどんなに美しいことだつたか、とても今は申されません。
嘆きの孔雀 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
その時知事は露台バルコニーの上から、その探検の成功と隊員の無事とを祈りながら花束を自動車へ投げ込んだ。それに続いて名誉職達は手に手に持っていた花束を雨のように下へ投げ下ろした。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
夜更けまで骨牌カルタをしたのちに、倶楽部の露台バルコニーへ出ると、彼らはそこにもいる。
花園の露台バルコニーで薔薇の香に包まれて、たゞひとり月に歌つた頃を想ひ出さずには居られなかつた。その頃は「幸福」の森のことばかりを夢見て、現在の自分を寂しい者だと思つた。
嘆きの孔雀 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
何分なにぶんのことでしたから火足はかなり速く、皆が火事だと気が付いた頃には、ホテルはもう一面火に包まれてゐました。見ると、第四階の露台バルコニーに老人が一人けぶりに包まれて立つてゐるぢやありませんか。
そこで少年は老人が降して呉れた梯子を昇つて露台バルコニーへ上り、老人の椅子の傍に立つて
首相の思出 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
その上私は生れつきこの様に美しい姿を持つて居りましたから——私が七つの時初めて家の露台バルコニーで、月夜の晩に、お月様のために、私の即興詩を歌ひましたら——たちまちそれが評判となつたのです。
嘆きの孔雀 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)