隣席となり)” の例文
哲学者は冷たい眼でじろり隣席となりの軍鶏を睨み/\してゐたが、黙つて懐中ふところから金貨を一つ取り出して、かちりと卓子テーブルの上に置いた。
繃帶はうたいのぞいたくちびるが、上下うへしたにべろんといて、どろりとしてる。うごくと、たら/\とうみれさうなのが——ちやういてた——わたしたちの隣席となりへどろ/\とくづかゝつた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自分ひとりではつまらないが、向側も隣席となりもみんなしてするのだから面白い。
同じようなお膳が出まして鯛の浜焼が名々めい/\皿に附いて出ましても、隣席となりの人の鯛は少し大きいと腹を立て、此家こゝの亭主は甚だ不注意きわまる、鯛などは同じように揃ったのを出せばいんだ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
修験者らしい老人が、盃を口から離しながら、隣席となりの商人らしい男に云った。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
乃公おれせいが低いものだから、食事の時には椅子の上にウェブスターを置いて、其上に腰を掛ける。乃公は奥さんの直ぐ隣席となりに坐る。今朝奥さんが一寸ちょっと立った時に、乃公は手早く椅子を退けてやった。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
隣席となりにいた一人が、卓上の燭台をとって苦悶者の上にさしつけた。
赤い部屋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼女は、あわてて隣席となりの者の前へ逃げた。
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もしか三度目に不通にでもなつたら、今度は隣席となりにゐる男の頭から新しい帽子でも手繰たくつて手向けようと思つてゐる。
△「えへゝゝ是は殿様………御免なさい、隣席となりにおでとも存じやせんで」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あんまり退屈だったから、乃公は隣席となりにいた奥様に斯う話しかけた。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)