のこ)” の例文
どこからか杉材を見つけて来て、足型ともん数に合せ、なたのこや小刀で、まず靴の底から作り初める。サンダルの底部と思えば間違いはない。
りっぱにお役に立てまする——立派だとも——くわをふりあげたり、のこの目を立てたりすることよりは、必ず手際よくやるわい
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
涙を惜しげもなく、ほろほろとこぼして泣きわめきながら、武士の腰のもの二つをのこで引いても放さないような意気込みで、しっかりと抱え込んで
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
忍び返しを越す工夫さへ見付かれば、あとはもう文句はない、——尤ものこで切るは考へなかつたよ、恐ろしい奴だ
涼しい風が薄寒い秋風に変って、ここの柳の葉もそろそろ散り始める頃、むざんのおののこがこの古木にたたって、浄瑠璃じょうるりに聞き慣れている「丗三間堂棟由来さんじゅうさんげんどうむなぎのゆらい
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一日に三匁とる職人が逆目さかめかんなをかけて恥ずかしいとも思わない、ひどいのになると尺を当てる手間を惜しんで押っ付けてのこを使うんだ、そのうえ云いぐさが
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
乾いた落葉が、あわてゝカラカラと舞いはしる。箒をさかさに立てた様な雑木山に、長いのこを持った樵夫さきやまが入って、くわ煙管ぎせるならくぬぎを薪にる。海苔疎朶のりそだを積んだ車が村を出る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
これだけが誰にでも分つて呉れゝば塔も建てなくてもよいのです、どうせ馬鹿なのつそり十兵衞は死んでもよいのでござりまする、腰抜のこのやうに生て居たくもないのですは
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「きゅう、きれきれきれきれきれ。これは機械のこが木をく音」
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
大きなのこを押したり引いたり
窓越しの裁断機やのこの歌も
同志下司順吉 (新字新仮名) / 槙村浩(著)
提灯を突き付けると、成程床板には二尺四方ほどののこが入つて、何にかの仕掛けで開くやうになつて居るのが、嚴重に締つてゐて、叩いてもんでも開きさうになかつたのです。
納屋の角には六三郎が来ない昔から一本の桜が植えてあって、今はかなりの大木になっていた。六三郎はこの桜の下でかんなのこをつかって、春が来るごとに花の白い梢を仰ぐのであった。
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
のこでがんす、鋸、刃もの、——都合によっては鋸の目立ても教えたり」
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
提灯を突き付けると、なるほど床板には二尺四方ほどののこが入って、何かの仕掛けで開くようになっているのが、厳重に締っていて、叩いても踏んでも開きそうになかったのです。
差換さしかへの一と腰は一年も前に質流れになつて、あとは刄物と言へば、お勝手の菜切庖丁だけ、それも男世帶で鰹節かつをぶしも削れば、時には薪も割る、まるでのこのやうになつて居るよ、いやもう
植木屋ののこに従って切倒される竹からは、贋造がんぞうの小判がゾロゾロと出て来ました。
植木屋ののこに從つて切倒される竹からは、贋造がんざうの小判がゾロゾロと出て來ました。
「匂ひを嗅いで見ろ、新しい木の匂ひがするだらう。泥も新しいぢやないか、その材木で物干臺から物干臺に渡つて菊屋に行き、歸つて來てすぐのこで引切つたのだ。恐ろしく智惠の働く野郎だ」
のこぢやありませんね、切出しかな」