金鼓きんこ)” の例文
馬烟うまげむりときの声、金鼓きんこの乱調子、焔硝えんしょうの香、鉄と火の世の中に生れて来たすぐれた魂魄はナマヌルな魂魄では無い、皆いずれも火の玉だましいだ
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
開始の軍楽ぐんがく。——それがやむと、両側のさく内で、金鼓きんこが鳴り、楼の上では用意! の黄旗が早や振られている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大魔術の小屋で大太鼓と金鼓きんこの音がけたたましく、鳴り出しましたから、墓地の中の二人も、これに驚かされ、問答の半ばでふたりいい合わせたように、この高い天幕の小屋を見上げますと
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
長順 始めは山の金鼓きんこの音、梵音楽ぼんのんがくを珍らしみ、勤行唱讃に耽りしが……
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
月がすッと山のかなたに落ちていったと思うと、林や谷のあたりから、天地もくずれるばかりのときの声が上がって、金鼓きんこ銅鑼どらの音がとどろきわたった。明軍みんぐんは月の入りを待っていたのである。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
こもり居て親をおもへば金鼓きんこうち踊るわれなり歌ふわれなり
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
海辺へはしれば海の中から、金鼓きんこを鳴らして追いまわし追いまわし、とうとう桑名城くわなじょうまでふくろづめに追いこんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
盛庸等之を破る。帝都督ととく僉事せんじ陳瑄ちんせんを遣りて舟師しゅうしを率いて庸をたすけしむるに、瑄却かえって燕にくだり、舟をそなえて迎う。燕王乃ち江神こうじんを祭り、師を誓わしめて江を渡る。舳艫じくろあいふくみて、金鼓きんこおおいふるう。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ふたたび、指揮台で青旗が打ち振られ、金鼓きんこ一声、馬は馬を追ッて、演武場の南の方へ、パッと馳け出た。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もあらせず、とうとうたる金鼓きんこや攻め貝もろとも、法師野ほうしのさとへひた押しに寄せてきた伊那丸勢いなまるぜい怒濤どとうのごとく、大庄屋おおしょうや狛家こまけのまわりをグルッととりかこんだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを合図に、四山金鼓きんこの声をあげ、郭淮かくわい、孫礼の四、五千人は、完全に包囲された形となった。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
錦帯山きんたいざんの方へはしったが、そこの谷間へかかると、谷の中からとうとうと金鼓きんこ銅鑼どらの声がするし、道をかえて、峰へ登りかけると、岩の陰、木の陰から、彪々ひょうひょうとして、蜀の勇卒が
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
波間にとどろく金鼓きんこ喊声かんせいにつれて、決死の早舟隊は、無二無三、陸へ迫ってゆく。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その間じゅう、敵味方の金鼓きんこと、わあッという喊声かんせいは、山こだまをゆすり鳴らす。それはすばらしい二人の剣戟けんげき俳優の熱烈な演舞をたすける、劇音楽と観衆の熱狂みたいな轟きだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのことばも終らぬまに、四面に銅鑼どらが鳴った。山地低地には金鼓きんこがとどろいた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつて彼の命の下にあえなき最期をとげた漢朝のふく皇后や、とう貴妃や、また国舅こっきゅう董承とうじょうなどの一族があらわれて、縹渺ひょうびょうと、血にそみた白旗はっきをひるがえして見せ、また雲の中に金鼓きんこを鳴らし
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たちまち、暗夜の途は金鼓きんこ鉄槍に鳴りひびいた。呉の大将丁奉ていほうの部下が早くも見つけて追ってくる。それを城中から関平の一隊が出てさんざんに駈け乱した。廖化はようやく死線を越えた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、金鼓きんこを打ち鳴らして、五百余騎の敵が、さっと駈けだしてきた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとたちまち一方の山間やまあいから闘志溌剌はつらつたる金鼓きんこが鳴り響いた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
折から、三通の金鼓きんこが、袁紹の陣地からながれた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)