野尻のじり)” の例文
尾張おわり領分の村々からは、人足が二千人も出て、福島詰め野尻のじり詰めで殿様を迎えに来ると言いますから、継立つぎたてにはそう困りますまいが。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
悦ばせはりある魚はなぎさに寄る骨肉こつにくなりとて油斷は成じ何とぞ一旦兩人の身を我が野尻のじりへ退きて暫時ざんじ身の安泰あんたいを心掛られよと諫めければ傳吉は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
芦屋あしやより平湯駅ひらゆえきに出で、大峠おおとうげを越し、信州松本しんしゅうまつもとに出まして、稲荷山いなりやまより野尻のじりそれより越後の国関川せきがわへ出て、高田たかたを横に見て、岡田村おかだむらから水沢みずさわに出まして
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
右は妙高の高嶺、左は関川の流れを越して斑尾まだらおの連山。この峡間はざまの関山宿に一泊あり。明くる日は大田切、関川越して野尻のじり近き頃は、夏の日も大分傾き、黒姫おろしが涼しさに過ぎた。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
その夕方に、半蔵は木曾福島の役所から呼ばれた用を済まし、野尻のじり泊まりで村へ帰って来た。家に泊まり客のあることも彼はその時に知った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
村中にても薄々うす/\知て居る者あれば幸ひと引取り親子共に夫婦となりける又おせんも我身わがみあかりもたち傳吉へ金ももどりし上は人々にいとまを告げ野尻のじりへ立ち歸りぬ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
野尻のじり泊まりで友人が立って行った後、彼は大急ぎで自分でもしたくして、木曾福島の旅籠屋はたごやまでそのあとを追いかけた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
世話好者せわずきの多きは常なるに傳吉か宅へ其夜來し人々は翌朝五六人おせんを野尻のじり宿の與惣次方へおくり行き前夜の始末しまつを話し又傳吉が心の廣きこと恨みある伯母に艱難辛苦かんなんしんくしてためし金の半分を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わずかに野尻のじり泊まり、落合泊まりで上京する信州小諸こもろ城主牧野遠江守とおとうみのかみの一行をこの馬籠峠の上に迎えたに過ぎない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
野尻のじり泊まりでまた街道を進んで行くうちに、半蔵はそんなことを胸に浮かべた。馬籠を立ってから二日目の午後のこと、街道を通る旅人もすくなくない。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
作ろうじゃありませんか。野尻のじり三留野みどの妻籠つまご馬籠まごめ、これだけの庄屋連名で出すことにしましょう。たぶん、半蔵さんもこれに賛成だろうと思います。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
彼には伊那いな助郷すけごうの願書の件で、吉左衛門の調印を求める必要があった。野尻のじり三留野みどのはすでに調印を終わり、残るところは馬籠の庄屋のみとなったからで。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
木曾谷は福島から須原すはらまでを中三宿なかさんしゅくとする。その日は野尻のじり泊まりで、半蔵らは翌朝から下四宿しもししゅくにかかった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ここへ来るまで、半蔵は野尻のじり旅籠屋はたごやでよく眠らず、福島でもよく眠らずで、遠山五平方から引き返して禰宜ねぎの家に一晩泊まった翌朝になって、ひどく疲れが出た。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
木曾十一宿はおおよそ三つに分けられて、馬籠まごめ妻籠つまご三留野みどの野尻のじりしも四宿といい、須原すはら上松あげまつ福島ふくしまなか三宿といい、みやこし藪原やぶはら奈良井ならい贄川にえがわかみ四宿という。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
行く先に残った花やさわやかな若葉に来る雨は彼のほおにも耳にも来たが、彼はそれを意にも留めずに、季節がら吹き降りの中をすたすた上松あげまつまで歩いた。さらに野尻のじりまで歩いた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
上松あげまつ須原すはら野尻のじり三留野みどの妻籠つまごの五宿も同様であって、中には三留野宿の囲いうちにある柿其村かきそれむらのように山深いところでは、一村で松明七千把の仕出し方を申し付けられたところもある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)