いや)” の例文
史に記す。道衍ばんに道余録を著し、すこぶる先儒をそしる、識者これをいやしむ。の故郷の長州ちょうしゅうに至るや、同産の姉をこうす、姉れず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
踊の玄人くろうとにしろその心のいやしさをその巧妙な手振りではおおいかくせぬものがあろう。だから、これは教養だ、人だ。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
惜しきことには、口のあたりどことなくいやしげなるところありて、黒水晶のごとき目の光鋭く、見つめらるる人に不快の感を起こさすが、きずなるべし。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
(そのふみは重く、かつ強し。その逢うときの容貌かたちは弱く、ことばいやし。)と言われ、パウロは無念そうに
パウロの混乱 (新字新仮名) / 太宰治(著)
コレ高人韻士ノいやシム所ナリ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
王賓は史にでん無しと雖も、おもうに道衍が詩を寄せしところの王達善おうたつぜんならんか。声を揚げて遙語ようごす、いやしむも亦はなはだし。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そこで偶然に最もいやしい種族の家をおとずれると、たちま其家そこの女にれられてしまった。
貧富幸不幸 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あらい衣をまとあらことばを使ひ、面白くなく、いやしく、行詰つた、すさまじい、これを絵画にして象徴的に現はせば餓鬼がきの草子の中の生物のやうな、或は小説雑話にして空想的に現はせば
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
触った其手は暖かであった、なよやかであった。其力はやわらかであった、たしかにいやしく無い女の手であった。これには男は又ギョッとした。が、しかし逃げもしなかった、口もきかなかった。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いやしい語にセツナ何とかいうのが有る、即ちそれである。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)