ちご)” の例文
三人目の男の履歴りれきについて、少しばかり私の意見を述べて書き送ってあったので、母は「ほんにこのむすめはまた、男さんがちごうてのう」
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「気持悪るおしたやろ。そやけど、そんなこと言うて居られへん。外とちごて、大事な眼どすよつて、愚図々々してたらあかん思うてな。」
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
というのんは、同じ刑事でも博奕打検挙するのんと密会者検挙するのんとは係りがちごてるんやそうで、その人たちはそれを心得てたらしいのんです。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「これはありがたい、この舟は他の舟とちごうて、ねえさんのような人がおるから、何もかもが往きとどいておる」
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
おきみ婆さんはいつも千日前の常盤座ときわざの向いの一名「五割安」という千日堂で買うてくる五厘の飴を私にくれて言うのには、十吉ちゃんは新ちゃんとちごて、継子やさかい
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「しかし今時の女子おなごは、むかしちごうて油断が出来んけれ、お気をお付けたがええぞなもし」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なるほど見たところ、衣服きものを着た時の姿とはちごうてししつきの豊な、ふっくりとしたはだえ
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「腹が出来んといくさも出来ん。」僕等のこおなった時に、却って平気なもんであった。軍曹が上官にしかられた時のうわつき方とは丸でちごてた。気狂いは違たもんやて、はたから僕は思た。
戦話 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
「親が二十はたちで子が二十一。どこで算用さんにょちごたやら」
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
「……そうでやすな……欠点といえるかどうか、知らねえでやすが……あんまり長く外国にいらしたで……日本の事情に、通じてなさらねえてところで、やしょうかな? 日本は、旦那のいたとことちごうて、コセコセした小さな国でがすで……」
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
「やっぱりいつもと様子ちごてるのかしらん、光子さんと友達になったことそないに自分幸福にさしたのんかしらん」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「そやけど、あんた良うおまツせなア、おはんちごてはつても、お父つあんお居やすよつて、まだ幸福しあはせや。」
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
「お前はよそさんの子供ちごて、ふたおやがないのやさかい、余計……。」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
ちごてた」と、失望した樣子で、「うちへ來るんかおもたら。」
お医者さんとちごて私やったら知れる心配も少いし、知れたとこで大した問題になれへんやろ。——そないいわれたんやと、まあ光子さんはいうのんです。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「お前はよそさんの子供ちごて、両親ふたおやが無いのやさかい、余計……」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)