道徳どうとく)” の例文
しかもけっして既成きせいつかれた宗教しゅうきょうや、道徳どうとく残滓ざんしを、色あせた仮面かめんによって純真じゅんしん心意しんい所有者しょゆうしゃたちにあざむあたえんとするものではない。
「——熊田孫七はおらぬかっ。榧野かやの五助は何しておるっ。森本道徳どうとく、山岸監物けんもつ、はや出合え出合え。鳥飼とりがい平八っ、馬印をこれへ立てよ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
智恵の力はふつうの人間とは、くらべものにならないくらいすぐれているが、感情だの、道徳どうとくだのというものは少しも持ってはいないんだ。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
成程舊い道徳どうとくなわでは、親は子供の體を縛ツて家の番人にして置くことが出來るかも知れぬが、藝術の權威を遵奉じゆんぽうする自分の思想は其の繩をぶちる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
自分じぶんのものでありながら、それを保証ほしょうする道徳どうとくのなかったこと、こんな、よいわるいの分別ふんべつがなくなるまで、社会しゃかいがくずれたかという、なげきにほかありません。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
美は一切の道徳どうとく規矩きくを超越して、ひとりほこらかに生きる力を許されている。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
さあ、そんなことはかんがえつかないが、人間にんげんは、道徳どうとくなどというものをまったくわすれて、つよいものちとなり、くにくに約束やくそくなどというものはなくなってしまうだろう……。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしたちが、こうして安心あんしんしてくらせるのも、世間せけん道徳どうとくがあり、秩序ちつじょがあるからです。この一にち平和へいわおくれたら、かみさまに感謝かんしゃし、ただしく努力どりょくされたなか人々ひとびとに、感謝かんしゃしなければなりません。
夢のような昼と晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)