逆立さかだち)” の例文
今度は自分で逆立さかだちをして写してみたり(可笑しなことには、大苦しみをして逆立で撮った写真も、出来上ってみれば普通の写真だった)
魔像 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「いよ/\お互の身の破滅だ。しのをとこでも出来たんだな……」と思ふと、男は髪の毛が逆立さかだちになるやうに思つた。そして急いであとを読み次いだ。
皿の底には、空想化された一匹の爬蟲類が逆立さかだちしていて、頭部と前肢まえあしが台になり、刺の生えた胴体がくの字なりに彎曲して、後肢あとあしと尾とで皿を支えている。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「ウム。京葉きょうはさん。」と年増はひざたたいて、「あの人ならむしろダンサー以上。逆立さかだちくらいやり兼ねないわ。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「清五郎が逆立さかだちしたところを、あの娘が長脇差で脇腹から肩まで刺したといふのか。そいつは曲藝だぜ、八」
銭形平次捕物控:180 罠 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
と云って三人が弓に矢をつがえると、小僧は早くも身をかわして、子供達が隠れているのと反対の森に駈け込んで、木の頂上に逆立さかだちをしたり、逆様さかさまにブラ下ったりして見せた。
猿小僧 (新字新仮名) / 夢野久作萠円山人(著)
からすあらそふとものがるゝことはかなはずすみやかに白状せよとさとされければ大膽無類の長庵も最早もはやかなはじとや思ひけん見る中に髮髯かみひげ逆立さかだち兩眼りやうがんそゝ惡鬼羅刹あくきらせつの如きおもて振上ふりあげ一同の者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
東京は目のくらむ所である。元禄げんろくの昔に百年の寿ことぶきを保ったものは、明治のに三日住んだものよりも短命である。余所よそでは人がかかとであるいている。東京では爪先つまさきであるく。逆立さかだちをする。横に行く。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
慶三はどうにかして二人の様子、二人の密談を窺おうと逆立さかだちするまでに頸と半身を窓の外に差出したが、八月の西日が赫々とさし込む台所には水道の栓から滴る水の音が聞えるばかりである。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
或は逆立さかだちし、或は飜筋斗返とんぼがえりし、斜立しゃりつしたるまま静止し、又は行歩こうほし、丸太転び、尺蠖歩しゃくとりあゆみ、宙釣り、逆釣さかづり、錐揉きりもみ、文廻ぶんまわし廻転、逆反さかぞり、仏倒ほとけだおし、うしろ返り、又は跳ね上り、飜落ほんらくするなぞ
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
博士の逆立さかだち8・15(夕)