讒謗ざんぼう)” の例文
その妹がさんざんに辱しめられ——恐らくは墓石も悲憤の涙で慄えるであろうような讒謗ざんぼう捏造ねつぞうとを浴びせられているのを
死者の権利 (新字新仮名) / 浜尾四郎(著)
ただ悲しいかな、今のみかどとは、事々御理想もたごうため、そしてまた、義貞輩よしさだはい讒謗ざんぼうのため、朝敵乱賊などと、一たんの汚名はうけられました。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
魚釣(この湾内ではもろ鰺が良く釣れるそうだが)の下手なのまでが讒謗ざんぼうの種子になろうとは、私も考えなかった。
彼はすなわち囂々ごうごうたる反対、妨害、罵詈ばり讒謗ざんぼうをものともせず、非戦論をひっさげて全国を遊説せんと志し、まず自己の選挙区に帰るや、有権者団体は
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
有った事か無い事か知らんが罵詈ばり讒謗ざんぼうを始めたはだしも、仕舞しまいには弟が非常に怒って兄をぶんなぐる。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
他人を讒謗ざんぼうして自分のみが優等なるものとするは憂国でもなければ愛国でもないと僕は信じている。
真の愛国心 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あんまりだからい……人の感情を弄んだの本田に見返ったのといろんな事を云って讒謗ざんぼうして……自分の己惚うぬぼれでどんな夢を見ていたって、人の知たこッちゃ有りゃしない……」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
かく申さば、讒謗ざんぼう罵詈ばり礼を知らぬしれ者と思ふ人もあるべけれど、実際なれば致方いたしかた無之候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
教会に捨てられ信者に讒謗ざんぼうされ悪人視せらるるは決して余のみにあらざるなり。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
賤民政府という小冊子パンフレットを旧大名に頒布したため、政府讒謗ざんぼうかどで鍛冶橋監獄に繋がれたが、出獄後は拘留中に発病した炎症痛風に悩み、癇癖を募らせて野蛮に近いふるまいをするようになり
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
一人口火くちびを切つたからたまらない。練馬大根ねりまだいこんと言ふ、おかめとわめく。雲の内侍ないじと呼ぶ、あめしよぼを踊れ、と怒鳴どなる。水の輪の拡がり、嵐の狂ふ如く、聞くも堪へない讒謗ざんぼう罵詈ばりいかずちの如くどっく。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さあ今度は、返すという段になると、人を鬼呼ばわりしたり、居留守いるすをつかったり、罵詈ばり讒謗ざんぼういたしたり、あげくに、払いもせず、おどすという人間もございます。
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先を見ずにその場にて一時のかいむさぼる極めて短慮な者には、内容のさらにない雄弁をふるってみたり、あるいは大声たいせいかつ、相手の人には痛くもない讒謗ざんぼうや冷評をあびせかけて
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
為にいよいよ、師直讒謗ざんぼうが、ささやかれ出す。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)