講釈こうしゃく)” の例文
旧字:講釋
「き、貴さま如き、義も恩も知らぬ人間から、武門の難に立った母と子の心がけを、講釈こうしゃくしてもらおうとは思わん。人非人にんぴにんめが、恥を知れッ」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じいさんはあたかも寺子屋てらこやのお師匠ししょうさんとった面持おももちで、いろいろ講釈こうしゃくをしてくださいました。おじいさまはんなふうされました。——
「そうですか、どこへ行っても初対面の人には自分の名前の講釈こうしゃくをするのが癖でしてね」「どんな講釈をするんだい」と事あれかしと待ち構えた迷亭君は口を入れる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
またあるとき太子たいし天子てんしさまの御前ごぜんで、勝鬘経しょうまんきょうというおきょう講釈こうしゃくをおはじめになって、ちょうど三日みっかめにおきょうがすむと、そらの上から三じゃくはばのあるきれいな蓮花れんげって
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かつてベルリンに在学のころヘルムホルツ博士の名が世界にひろくとどろいているので、僕の学問にはなんの関係もなかったけれども、好奇心にかられて先生の講釈こうしゃくを一度聞きにいったことがあった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そいつをいかさまだかさかさまだかにつるさげて、ものにしたといちゃァ、志道軒しどうけん講釈こうしゃくじゃねえが、うそにもさきかねえじゃいられねえからの。——相手あいて橘屋たちばなや若旦那わかだんなだったてえな、ほんまかい
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「へッ、まるで心学の講釈こうしゃくだ。親分も年を取ったぜ」
銭形平次捕物控:124 唖娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
ひょうひょうした調子で講釈こうしゃくをしながら
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そういうと、一応、講釈こうしゃくしたくなる。——俺は先頃、音相学おんそうがくの書物を見た。顔に、人相がある如く、声にも、音相があるというのがその学説だ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
講釈こうしゃくの気でいやがる」
『貴公から恋の講釈こうしゃくを聞こうとは思わなかった。一体、その佳人とは誰だ』
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)