たく)” の例文
吉保の身辺に危害をたくむ刺客の影のさすことは、きょうまで一度や二度のことではなかった。吉保もいつか馴れて来たほどである。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此のお國にお手がつき、お妾となりました所、隣家となり旗下はたもとの次男宮野邊源次郎と不義を働き、内々ない/\主人を殺そうとたくみましたが、主人はもとより手者てしゃの事ゆえ、容易に殺すことは出来ないから
実に巧妙辛辣しんらつを極めた計略をたくらんだ訳だ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
事をたくはじめに、与十郎種利をそそのかして、功成れば、秀吉に取次いで重賞を与えよう——と誘惑したのは、たれでもない、かれ自身である。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幕府をたおそうとたくんでいることは本心になる——などという讒言ざんげんを、直々にいわせようと、あらゆる画策かくさくに怠りない様子であるとか告げている。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殺し、直ちに、叛旗はんきをかかげて、柴田勢をこの堂木、神明の二塁へ引き入れんと、深くたくんだものに相違ございませぬ
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その頃、林佐渡が、彼にあいそをつかし、信長の弟の信行のぶゆきを奉じて、織田家のあとに立てようとたくんだことがある。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ために尊氏の早手まわしがいて、大塔ノ宮が、たくみに謀んだことも断念のほかなくなったものなのである。
それに代って、ちょうに立った政閥せいばつと、それをめぐる僧官とが結んで、弟の慈円僧正をも、青蓮院から追い出して、自党の僧で、その後にすわろうというたくらみなのでもあった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「生白い若公卿ずれの才覚などに、なじか北条殿の御代ごだいが揺ぎでもしようかい。そんなたくみに、わが聟までが加担とは沙汰の限りよ。馬鹿者めが、天魔にでも入られたか」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其許そこも御存知の土岐左近めが、公卿のたくみに乗って、六波羅の討手をうけ、あのような馬鹿な最期をとげたため、この方までが、とんだ飛ばッちりをうけるところでおざったよ。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
、真実、悔いてもおるともいう。……自体、あの男は、単純な武骨一片の男で、深いたくみがあったわけでもなく、まあ、徳川殿に、そそのかされて、うまく利用されてきたものじゃ
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「代々の北条殿の恩顧もわすれ、大それた逆をたくむ人非人。つらをみせよ、名のり出よ」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかなる大胆な人間もたくみ得ないほどなことを、今は小心そのものの光秀が、咄嗟とっさに実行しよう——と思い極めるに至ったのは、彼の積極性ではなく、むしろ彼以外のものだった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちょうど俺はその前の晩、学寮の連中とたくらんで、例の坂本の町へ飲みに降りたのだ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひそめまする。そして人の恐ろしいたくみからのがれて、ただただ、お上と宮将軍とのご父子のあいだが、まるうおさまってゆきますように。……廉子のとる途は、それ一つしかございませぬ
盧俊儀ろしゅんぎ!」と、中書はやがて、声あららげて。「そのほう、北京に住むこと五代の由緒ゆいしょある良民にてありながら、梁山泊の賊徒と通じ、不逞ふていたくむよしの聞えあるが、言い開きはあるまいな」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「だが、一挙にそれをやろうと、密々、たくんでおられるではないか」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)