謀反人むほんにん)” の例文
義賊ぎぞく侠客きょうかく謀反人むほんにんの類はそれとなく柴君の弥次馬性に訴えるところがあるんだね。君は自分の家さえ焼けなければ火事は面白いという組だろう?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「上告文は、あの通りに違いないか。将門にたいし、右馬允は、謀反人むほんにんなりと断じてあるが、それに、相違ないのか」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(間)だが俺の心はどうだ、(破裂せる如き調子)俺の心はまるで謀反人むほんにんの心のように、絶えず苦しみ、気を遣い、他人の思慮おもわくを憚り、そして常時しじゅう疑っている。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これは公方様くぼうさまないがしろにしたものだ、公方様以外に明君が出てほしいと言うなら、いわゆる謀反人むほんにんだということになって、組頭はすぐにお城の中で捕縛されてしまった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これは神皇正統記やなぞにつたのであるが、これでは将門は飛んでも無い純粋の謀反人むほんにんで、其罪逃るゝよしも無い者である。然しさういふ事が有り得るものであらうか。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
それを果せなかったら、この場でその方をぐるぐる巻きに縛って、謀反人むほんにんとしてあすこにある十月ビールの大樽の中へすっかりつけて溺死させることを、わしは判決する!
西南戦争ののち程もなく、世の中は、謀反人むほんにんだの、刺客しかくだの、強盗だのと、殺伐さつばつ残忍ざんにんの話ばかり、少しく門構もんがまえの大きい地位ある人の屋敷や、土蔵のいかめしい商家の縁の下からは
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
それを心から感心して見るのは、どうしたって、本町の生薬屋きぐすりや御神おかみさんと同程度の頭脳である。こんな謀反人むほんにんなら幾百人出て来たって、徳川の天下は今日までつづいているはずである。
しかし……どうにでもなれ。どうかしてこの大事な瀬戸をぎぬけなければ浮かぶ瀬はない。葉子はだいそれた謀反人むほんにんの心で木村の caress を受くべき身構え心構えを案じていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
紅葉初め硯友社の同人が美妙を謀反人むほんにん扱いしたのも万更まんざら無理ではなかった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
だから内乱が鎮まると、いつも謀反人むほんにんはブレフスキュに逃げて行きました。とにかく、卵の小さい端を割るぐらいなら、死んだ方がましだといって、死刑にされたものが一万一千人からいます。
わかったか、マリユス! お前が男爵だって! ロベスピエールに仕えた奴らは皆山賊だ。ブ…オ…ナ…パルテに仕えた奴らは皆無頼漢だ。正当な国王にそむき、背き、背いた奴らは皆謀反人むほんにんだ。
天下が騒々敷そうぞうしい、ドウカ明君が出て始末を付けて貰うようにしたいとえば、れは公方様くぼうさまないがしろにしたものだ、すなわち公方様を無きものにして明君を欲すると所謂いわゆる謀反人むほんにんだと云う説になって
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「エツ、家の中の誰がその謀反人むほんにんの片割れです、太い奴だ」
「世の縄墨じょうぼくそむいたが最後、それ異端者だ、切支丹キリシタンだ、やれ謀反人むほんにんだと大騒ぎをする」「うん、こいつはもっともだ」「今の浮世の有様は、太平無事でおめでたい」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「同士打ちすな。謀反人むほんにんは、旧柴田勝豊の家中のみなるぞ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
謀反人むほんにんの娘として、お紋は艱難辛苦かんなんしんくめました。
……ところで京姫だが、今から思うと、将右衛門に預ける必要はなかった。正雪一味と手を切ってみれば、謀反人むほんにんにされる気づかいもなく、家の潰れる気づかいもない。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ほほうさようか、困ったものだな」太郎丸わざと空トボケ、「では謀反人むほんにんが出たと見える」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「こう構えれば拙者は与力、幕府の役人にござります! ……たとえ名門におわそうと、殿は布衣ほい、無位無官、拙者をお斬り遊ばしたが最後、謀反人むほんにんとおなりなされましょうぞ!」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「葡萄大谷をしろしめす我らがご主君弾正太夫様を敵に裏切る謀反人むほんにんじゃ!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そう出来ぬ訳は何かというに、お家に謀反人むほんにんがあるからじゃ!」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
謀反人むほんにんありとの取り沙汰が、部落民の意気を沮喪そそうさせたことももちろん原因ではあったけれど、天蓋山てんがいさんの鉱山から鉱石が出ないという噂がいつとはなしに一般に拡がって、人々の心を驚かせたことと
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)