かこつ)” の例文
お母さんの責め立て方が追々厳しくなったので一寸気を抜く為めに、世態人情の探究にかこつけて少時しばらく家を明ける魂胆としか受取れない。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
何かかこつけ、根は臆病でげただよ。見さっせえ、韋駄天いだてんのように木の下を駆出し、川べりの遠くへ行く仁右衛門親仁を
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何だネおちかさん、源三さんにかこつけて遊んでサ。わたしやお前はお浪さんの世話を焼かずと用さえすればいいのだあネ。サアこっちへ来てもっとおりよ。」
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
私の空想がこのことを、ベートーヴェンにかこつけていうのでは少しもない。ベートーヴェン自身がそれをいっている。彼の書いたものの中にこの事はたくさんある。
いつもよく出るお今のことがもとで、それからそれへと、喧嘩いさかいことばが募って行った。時々花などにかこつけてふけっている、赤坂の女のことなども、お前の口から言い出された。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この行事中余りに劇しく笞うたれて辛抱ならず、用事にかこつけ退き去るも構わねど、もし眼をうごかすなどすこしでも痛みに堪え得ぬしるしを見せると大いに嘲られ殊に婦女に卑しまると。
外に何かにかこつけて臨時が必ず一回入る。道子さんも無論待っている。或晩、矢張りその臨時で社の帰りに寄った時、堀尾君は
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
何も、雀にかこつけて身代しんしょうの伸びない愚痴ぐちを言うのではない。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うなると影日向かげひなたも半公認だ。寛一君は同輩の手前具合が悪いから、三度に一度は多忙にかこつけて辞退した。伯父さんの註文と従兄の要求が相容れないには困る。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
佳子さんが病気にかこつけて面会を断った翌日だった。早速出頭したら、閣下は書斎へ通してくれた。しかし腕組みをしたまゝ、頻りに溜息をついて、ナカ/\切り出さない。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と菊太郎君は夕涼みにかこつけた。実際暑い晩だったが、以来これが癖になってしまって、季節は問うところでない。昨今でも何か事があると、腕組みをして往来をブラ/\歩く。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と社長は万事多忙にかこつけて、昼食ちゅうじきを済ますと間もなく帰って行ってしまった。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と富士子さんは冗談にかこつけて、瀬戸君のポケットをあらためた。或は佳子さんの写真が秘め忘れてありはしまいかと思いついたのだった。しかし問題になるようなものは何も入っていなかった。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
此奴、野球にかこつけて、もう一つの問題をふうしているのかと気を廻した。
村一番早慶戦 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そうして関から彼方むこうでは京大阪は無論中国西国の連中が交りますから、確に見聞は広くなりましたな。昔の人も巧いことを考えたものですよ。お伊勢さんにかこつけて一種の国民教育をやっていたのです
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
小室 期末には夜業にかこつけてもよろしい。
秀才養子鑑 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と村上君は冗談にかこつけて気を引いた。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と僕は冗談にかこつけて脅かしてやった。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
悉皆すっかり三輪夫人にかこつけてしまった。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)