袖屏風そでびょうぶ)” の例文
まだ解けたことのない娘島田を傾けて、袖屏風そでびょうぶに眼を隠しながら一心に祈る——何とぞどうぞ栄三郎さま、弥生のためにお勝ちなされてくださいますよう!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
みんかしこまって六字の名号みょうごうしたためた。咲子は見ちゃいやよと云いながら袖屏風そでびょうぶをして曲りくねった字を書いた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お鉄(此奴こやつあ念を入れて名告なのる程の事ではなかった)は袖屏風そでびょうぶで、病人をいたわっていたのでありますが
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いずれにも尋ぬる物の体が一目には見出し難いものですから、ややもすれば消えなんとする手燭を袖屏風そでびょうぶにして、また一足、また一足、怖い人穴の中へ忍び入るような足どりも
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
千浪は、慌てて、提灯の明りへ袖屏風そでびょうぶをかざした。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこでつぼめて、逆上のぼせるばかりの日射ひざしけつつ、袖屏風そでびょうぶするごとく、あやしいと見た羽目の方へ、袱紗ふくさづつみを頬にかざして、しずかに通る褄はずれ、末濃すそごに藤の咲くかと見えつつ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はつと袖屏風そでびょうぶして、なかさえぎるとひとしく、御簾中の姿は、すつと背後向うしろむきに成つた——たけなす黒髪が、もすそゆらいだが、かすかに、雪よりも白き御横顔おんよこがおの気高さが、振向ふりむかれたと思ふと
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いやみな色気だ、袖屏風そでびょうぶで倒れやがる、片膝はみ出させた、蹴出けだしでね。「騒ぐな。」と言句もんくすごいぜ、が、二人とも左右にげてね、さて、身体から珊瑚さんご五分珠ごぶだまというかんざしを借りたんだがね。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)