蟷螂とうろう)” の例文
炎天、日盛ひざかり電車道でんしゃみちには、げるような砂を浴びて、蟷螂とうろうおのと言った強いのが普通だのに、これはどうしたものであろう。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ピリオドを打ち得ず、小さいコンマの連続だけである。永遠においでおいでの、あの悪魔デモンに、私はそろそろ食われかけていた。蟷螂とうろうおのである。
張飛が船上へとび上がると、出合い頭に、周善がほこをもって斬りかけてきた。龍車に向う蟷螂とうろうの斧にひとしい。張飛が
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その虫がすでに宮中に入ると、西方から献上した蝴蝶こちょう蟷螂とうろう油利撻ゆりたつ青糸額せいしがくなどいう有名な促織とそれぞれ闘わしたが、その右に出る者がなかった。
促織 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
『荒鷲』爆撃機も『ライオン』戦車も、一たび『富士』の前へ出たら、あわれな蟷螂とうろう(かまきり)のおのじゃないか。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
蟷螂とうろうの斧、このとき万一の僥倖ぎょうこうすらも考へられぬ戦争で、死屍累々、家康は朱にそまり、傲然斧をふりあげて竜車の横ッ面をひつかいたが、手の爪をはがした。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
盲人めくら蛇にじず、やぶを突ついて蛇、毛を吹いて傷を求め、飛んで火に入る夏の虫か、蟷螂とうろうの竜車に向うおの、いやはや、いやはや、おかしくってへそが茶を沸かすぞ
百足ちがい (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「いかに恨みに思えばとて、相手は一藩の主、手前は郷士上りの一武芸者、竜車りゅうしゃに刃向う蟷螂とうろうのなんとやら、これでは、てんから芝居になりませぬ。あは、あはははは。」
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
敵味方の衆寡はあだかも蟷螂とうろう車轍しゃてつに当る如く、蚊子ぶんしの鉄牛をむが如きものがあります。
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
蟷螂とうろうおのだ、いざとなれば旗本八万騎が物を言う、せても枯れても三百年来の江戸だ——今日までタカをくくっていたのだが、時勢が、事実そんなに急激に変動して来たのか。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
蟷螂とうろう竜車りゅうしゃに刄向うよりもなおおろかしき手向いだてと思われるのに、引きもせずじりじりと、爪先立ちになって、九本の刄を矢来目陣やらいめじんに備えながら、退屈男に押し迫ろうとしましたので
蟷螂とうろうに斧だ! くたばれ女郎!」
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
先の動静は、此方こちらで探るし、此方こっちの行動は先でも探っていよう。吉良、上杉、浅野の三家を例えれば、ちょうど——蟷螂とうろうせみうかがえば、野鳥やちょう蟷螂を狙う——というようなものだ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
溜息ためいきついて、また次の一作にとりかかる。ピリオドを打ち得ず、小さいコンマの連続だけである。永遠においでおいでの、あの悪魔デモンに、私はそろそろ食われかけていた。蟷螂とうろうおのである。
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)
時に、手足をうごかし、時に口より音を発するからとて、人間なりとは申されん。蟷螂とうろうも手足を振舞い蚯蚓みみずも音を発する。——丞相のおん眼はふし穴か、これがみな人間に見えるとは。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかに盲蛇にじずと云え、吾から蟷螂とうろうの斧をふるッて、飛びかかッた向う見ず
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
龍車りゅうしゃにむかう蟷螂とうろうおのということばがある。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「小癪な女め、蟷螂とうろうおのだ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蟷螂とうろうおのとは、このことぞ
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
笑止しょうしや、蟷螂とうろうおのだ」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)