藍色あゐいろ)” の例文
地味な藍色あゐいろの袷、赤い帶揚が僅かに燃えますが、浮世繪から拔け出したやうな非凡の姿態ポーズで、二人の先に立つて、イソ/\と奧へ案内するのです。
そして、藍色あゐいろを成した漂渺へうべうとした海の遙か彼方に故郷のあることが思はれ病兒の身の上が思はれ、眼瞼の裏は煮え出して唏泣すゝりなけ、齒はがた/\とふるへわなゝいた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
いはなはいろすこくろはらあかてんがあり、やまめはいろしろたてうつくしい藍色あゐいろすぢがあります。またやまめのくちはいはなよりすことがつてゐて、おほきさはとも七八寸しちはつすんがとまりです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
さうさう、いつか見た古備前こびぜんの徳利の口もちよいと接吻せつぷん位したかつたつけ。鼻の先に染めつけの皿が一枚。藍色あゐいろの柳の枝垂しだれた下にやはり藍色の人が一人ひとり莫迦ばかに長い釣竿つりざをを伸ばしてゐる。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
つかれたやうに、藍色あゐいろうすいネルをながして
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
細長い藍色あゐいろの旗である。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
蝋燭の灯を中心に、女の頭の上に顏を集めると、濃い黒髮の地に、藍色あゐいろゑがかれたのは、まぎれもない一匹の鼠の文身ほりもの
祥瑞しよんずゐ江村かうそんは暮れかかつた。藍色あゐいろの柳、藍色の橋、藍色の茅屋ばうをく、藍色の水、藍色の漁人ぎよじん、藍色の芦荻ろてき。——すべてがやや黒ずんだ藍色の底に沈んだ時、忽ち白々しらしらと舞ひあがるお前たち三羽の翼の色。
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
湿潤しめりふかき藍色あゐいろくらさ……
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
聞き兼ねた樣子で、店先へ顏を出したのは、藍色あゐいろの袷を着た、紫陽花あぢさゐのやうな感じのするお新でした。
湿潤しめりふかき藍色あゐいろくらさ……
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)