薄命はくめい)” の例文
しかし、城太郎の泣きじゃくりがいつまでも耳にこびりついていて、もう頼りびとのない薄命はくめいな少年のおろおろした姿が背中に見える気がしてならない。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
離縁りえんして昌次郎へつかは見返みかへらざるはしんなり罪なくして牢屋につながれ薄命はくめい覺悟かくごして怨言ゑんげんなきはれいなり薄命はくめいたんじて死を定めしはゆうなり五常ごじやうの道にかなふ事かくの如く之に依て其徳行とくかう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あゝ、薄命はくめいなあの恋人達はこんな気味きみのわるい湿地しつちまちに住んでゐたのか。見れば物語の挿絵さしゑに似た竹垣たけがきの家もある。垣根かきねの竹はれきつて根元ねもとは虫にはれて押せばたふれさうに思はれる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
およそこの身ほど、骨肉に薄命はくめいな者があろうか。
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
取出してふできよらかにしたゝめられしは「なんぢ父にうとまれしに非らず母にうとまれしにあらず父母すてるに非ず自分の薄命はくめいなり元祿二年九月貧暦ひんれき」と書付て其まゝ行過ゆきすぎける兎角とかくする内に村方の役人其外大勢の人あつまりて地頭ぢとう代官所へ訴へ出ければ役人方見分けんぶんの上捨子の儀は村方へ養育申付られ小兒は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)