ふな)” の例文
余が十歳の夏、父母にともなわれて舟で薩摩境さつまざかいの祖父を見舞に往った時、たった二十五里の海上を、風が悪くて天草の島に彼此十日もふながかりした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「いや、そんなものは見えない。しかし島の左のはしのところを見てごらん。ふなつきらしい石垣が見えるじゃないか」
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
時々古いふなべりを打つては、蒼白い火花をほとばしらせる、泊夫藍色サフランいろの浪の高さ。その舟のともにはいはほのやうに、黙々と今日けふかいを取つた、おお、お前! 寂しいシヤアロン!
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そこで一、二、三とかけごえをして、こぎしました。うさぎはかんかんふなばたをたたいて
かちかち山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
軍吏ぐんり徐彦成じょげんせいは材木を買うのを一つの商売にしていまして、丁亥ていがいの年、しん州の汭口場ぜいこうじょうへ材木を買いに行きましたが、思うような買物が見当らないので、暫くそこにふながかりをしていると
南風はえすずし籠飼ろうげあげをるふなわきをわが舟にして声はかけつつ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夕されば橋なき水のふなよそひ渡らば秋の花につづく戸
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
低き波止場はとばふなよそひ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
いました。するとたぬきもけないになって、ふなばたをこんこんたたいて
かちかち山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
水天宮のふな囃子。——夕ごゑながら
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ふなかせぎ、わたりさすらふ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)