聟殿むこどの)” の例文
固唾かたずをのんで待っていた——前田犬千代、池田勝三郎、佐脇藤八郎、そのほかの若侍の面々の中に、ゆうべの聟殿むこどのの藤吉郎も、勿論交じっていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まず世間を見渡して見給え。きのう貰った花嫁も今日死なんとも限らんではないか、しかし聟殿むこどのは玉椿千代も八千代もなど、おめでたい事を並べて心配らしい顔もせんではないか。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たけとらの上のさるには侮られて位置の懸隔を恨むらん、われ肩書に官爵あらば、あの田原の額に畳の跡深々とつけさし、恐惶謹言きょうこうきんげんさせて子爵には一目置いちもくおい挨拶あいさつさせ差詰さしづめ聟殿むこどのと大切がられべきを
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かへしけりそれより長兵衞は大傳馬町おほでんまちやう家主いへぬし平右衞門方へいゑもんかたゆき先達さきだつ御話おはなし聟殿むこどの白子屋庄三郎方にてもらたきよしゆゑ御世話下おんせわくださるべし白子屋事は材木町ざいもくちやうにて千三百りやう地面ぢめん持居もちをり御屋敷方おやしきがたの出入澤山たくさんあり株敷かぶしきは三千兩ほどなり然れば五百りやうぐらゐ持參ぢさんありてもよろしかるべし殊更ことさら娘お熊は當年廿二歳にて容貌きりやうもよくうけたまはれば聟殿むこどの
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さてはと、もう聟殿むこどのになったつもりで、いろいろな空想にひたっていた彼は、急に、顔がまた、かあっと熱くなった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
輿入こしいれの折は、義元の養女という資格であったから、貧しい三河者の質子ちしである聟殿むこどのとは、その支度の善美や、盛装のまばゆさはくらべものにならなかった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、遥か野面に見えた松明は、聟殿むこどのがみずから振っていたかもしれぬ
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何か、めでたい儀式があるというが、その聟殿むこどのは、何者でござるか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『さア、見ましょう見ましょう。聟殿むこどの、踊ったり、踊ったり』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彦太は、聟殿むこどのだった。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)