羽搏はばたき)” の例文
何でも夜半よなかのことだと聞きましたが、裏の鶏舎とや羽搏はばたきの音が烈しく聞えたので、彌作がそっと出て見ると、暗い中に例の𤢖が立っている。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お品の口をふさぐと、扱帶しごきを解いてキリキリと縛り上げました。柄に似ぬ非凡の力で、お品などは羽搏はばたきもさせることではありません。
あやしき神の御声おんこえじゃ、のりつけほうほう。(と言うままに、真先まっさきに、梟に乗憑のりうつられて、目の色あやしく、身ぶるいし、羽搏はばたきす。)
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると文鳥は急に羽搏はばたきを始めた。細くけずった竹の目から暖かいむく毛が、白く飛ぶほどにつばさを鳴らした。自分は急に自分の大きな手がいやになった。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
市廳の大時計のまはりに羽搏はばたきするこふの鳥は頸を中天にさし延ばして雨の水玉を喙に受けてる。
ハルレム (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
しかしなんと云う、急な羽搏はばたきの音だろう、ざわざわ
お品の口を塞ぐと、扱帯しごきを解いてキリキリと縛り上げました。柄に似ぬ非凡の力で、お品などは羽搏はばたきもさせることではありません。
その羽搏はばたきの光を追い掛けて寐ているうちに、頭がゆかから浮き上がって、ふわふわする様に思われて来た。そうして、何時の間にか軽い眠に陥った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此奴こいつ羽搏はばたきをしない雁だ、と高をくくって図々しや。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ようやくの事先鋒せんぽうを去る事約五六寸の距離まで来てもう一息だと思うと、勘左衛門は申し合せたように、いきなり羽搏はばたきをして一二尺飛び上がった。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
男は必ず負ける。具象ぐしょうかごの中にわれて、個体のあわついばんでは嬉しげに羽搏はばたきするものは女である。籠の中の小天地で女と鳴くを競うものは必ずたおれる。小野さんは詩人である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其時代助の脳の活動は、夕闇ゆふやみを驚ろかす蝙蝠かはほりの様な幻像をちらり/\とすにぎなかつた。其羽搏はばたきひかりけててゐるうちに、あたまゆかからがつて、ふわ/\する様に思はれてた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)