美貌びばう)” の例文
横顔などは丁度トランプの王様などに見るやうな、クラシックな美貌びばうの線がなめらかに其の額へと上つてゐた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
藝人の愛嬌あいけうで前髮は立てて居りますが、もう二十二三にもなるでせうか、恐ろしい美貌びばうで、引締つた細顎ほそあご、長い眼、ふくよかな顎、華奢きやしやにさへ見える恰好など
彼女が以前は綺麗だつたとはとても考へられないが、でも若しかしたら彼女には美貌びばうをもつてゐない不足をつぐなふやうな獨創性や性格の力があるのかも知れない。
たけなる髪をうしろに結びて、りたるきぬへたる帯、やつれたりとも美貌びばうとはが目にも許すべし。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かけあげなと言れてハイと答へなし勝手口かつてぐちより立出るは娘なる年齡としのころまだ十七か十八こうまつの常磐のいろふかき緑の髮は油氣あぶらけも拔れどぬけ天然てんねん美貌びばうは彌生の花にも増り又中秋なかあき新月にひづきにもおとらぬ程なる一個の佳人かじん身にはたへなる針目衣はりめぎぬ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たけなるかみをうしろにむすびて、ふりたるきぬになえたるおびやつれたりとも美貌びばうとはにもゆるすべし、あはれ果敢はかなき塵塚ちりづかなか運命うんめいてりとも、きたなよごれはかうむらじとおもへる
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
兩國に小屋を掛けて、江戸開府以來最初の輕業かるわざといふものを見せた振袖源太。前髮立の素晴らしい美貌びばうと、水際立つたあざやかな藝當に、すつかり江戸ツ子の人氣を掴んでしまひました。