美人局つつもたせ)” の例文
あんな生若なまわかい癖に駕籠賃を踏み倒したりなんかして、あれがだんだん増長するとかたりや美人局つつもたせでもやり兼ねないと……
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
亭主ていしゅもつなら理学士、文学士つぶしが利く、女房たば音楽師、画工えかき、産婆三割徳ぞ、ならば美人局つつもたせ、げうち、板の間かせぎ等のわざ出来てしかも英仏の語に長じ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
押借おしがり強請ゆすり美人局つつもたせと、あらゆる無頼の味をめた、そして飽くことを知らぬ女の情慾のために、今では治る望みもない労咳を病む身となっている——。
お美津簪 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
平生ふだん着馴きなれた振袖ふりそでから、まげも島田に由井ヶ浜、女に化けて美人局つつもたせ……。ねえ坊ちゃん。梅之助が一番でしょう」
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
蘭子の父はその美しい妻をおとりにして、ちょくちょく美人局つつもたせを働いていたというから、今度の犯人も恐らく蘭子の母親の甘い空言そらごとに酔わされた一人であろう。
江川蘭子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
最初はこうした男女の組合せとしては、最もなしやすい美人局つつもたせを稼業とした。そうして信州から尾州へかけての宿々で、往来の町人百姓の路用の金を奪っていた。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「お前のかかあは踏める顔だ。流れたら安く買ったものを」「そうなったらおいら裏返り、美人局つつもたせの凄い兄さんとなり、手前の家へ強請ゆすりに行く」「その頃女は惚れている」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
淪落りんらくの雑種の女の美人局つつもたせに掛ったりするので、なか/\内部地方へ入って行けなかった。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
生粋の放蕩者ユロ男爵を遂に社会のどん底につき落したパリの美人局つつもたせ、従妹ベットの共犯者マルヌッフ夫妻の住んでいるぞっとするような湿っぽいルーブルの裏通りへ連れ込まれる。
バルザックに対する評価 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
坊さんが厭味いやみらしい目つきをするのを知っていて、まあ大それた美人局つつもたせだわね。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
美人局つつもたせでもやりかねない女ではあるが、環境というものが、そうまでは進ましめないでいる鼻先へ、七兵衛という奴が、猫に鰹節を見せびらかすような、キザな真似まねをして見せたけれども、結局
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ほうらね。だから、言わないこっちゃない。……美人局つつもたせですか?」
犂氏の友情 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「読めた、さては道中かたりか美人局つつもたせの」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甚しきは美人局つつもたせでも遣りかねないほど軽蔑けいべつしていら。母様の口ぶりが
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「うん、やるつもりか! 美人局つつもたせ!」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
美人局つつもたせで産を成したという、強者したたかもの
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)